TAKURO YOSHIDA
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ラジオの青春

私たちが日ごろ口ずさんだり・・テレビの歌番組とかで観たり聴いたりしている「歌」は


大まかに言えば2つのパタ-ンで作られている(細かい専門的な音楽論は不要)


1つは「メジャ-系のコ-ド」という和音構成で始まる曲で、比較的に明るい印象がある


もう1つは「マイナ-系のコ-ド」という、やや哀愁に満ちた印象を与える要素を持っている


この2つの和音構成のコ-ド名で、すべての楽曲が成り立っている


 

 

「襟裳岬」はメジャ-コ-ドで「やさしい悪魔」はマイナ-コ-ド・・・


こう言うと「エッ?」っと思われる人も居るだろう(上記の文章から察しても)


それは「歌っている歌手のイメ-ジ」から来る錯覚もあるようだ


森進一を想う時に「演歌」の人という先入観があるのは普通である


キャンディ-ズは「ポップス」なイメ-ジがあって、少なくとも彼女達から「演歌」な香りはしない


確かに演歌系のヒット曲には古くから、マイナ-コ-ドで始まる「少し哀しい曲想」なモノが多い


(日本人はマイナ-和音の響きが好き!と言われているようだ)


そしてアメリカンポップスのヒット曲は、ほぼメジャ-コ-ドで始まっている


(イ-グルスの大ヒット曲「ホテル・カリフォルニア」は珍しくもマイナ-コ-ドで始まる)


「ポップス=メジャ-」「演歌=マイナ-」なイメ-ジが強いのは


その曲を歌った歌手のイメ-ジが、いつの間にか「偏った想像」へと導いているかも知れない


ただし森進一やキャンディ-ズの本当の心根がドライかウエットかは本人しか知らないし


さらに言えば、吉田拓郎メロディ-は


メジャ-コ-ドでも哀愁があり(ル-ムライト・アンドゥトロワ・全部抱きしめてetc)


マイナ-コ-ドでも軽快な印象がある(ドンファン・私の首領・メランコリ-etc)


・・・と・・・自分で褒めている(笑)


僕がアマチュア時代に米軍キャンプ等で歌っていた頃、ロックバンドで学んだ


「アメリカンポップスの隆盛を呼び込んだコ-ド進行」が影響しているのかも知れない


*音楽的な話しをチョットすれば・・・


 例えばEm(イ-マイナ-)というコ-ドで曲が始まったとしたら


 その曲のサビ(第2メロディ-)はG(ジ-)とかC(シ-)というメジャ-コ-ドで始める


 逆にG(ジ-)というメジャ-コ-ドで曲が始まった場合は


 サビはEm(イ-マイナ-)とかAm(エ-マイナ-)などのマイナ-コ-ドで作る


 これだけでも、その曲のイメ-ジが「マイナ-とかメジャ-とか」に関係なく伝わる


 残念ながら「古い日本の歌謡曲」はマイナ-で始まったままマイナ-のままで終わる


 シンプルだけど、なんだか「暗くて重い」・・・そこが僕は苦手だった


 

 

 

アルバム「ラジオの夢」3曲目は「骨まで愛して」だ


この曲はメジャ-コ-ドで始まる


ここで、今日は特別に「吉田拓郎が好きだった演歌曲集」をご紹介しようと思う(笑)


70年代に上京して「あまりに旧態然とした日本の、歌謡曲中心の音楽界」に失望し


「自分の道を自分で作って行くしかない」という、当時とすれば「世間知らずで生意気な」


思い上がった結論を出した僕ではあったが・・あの当時、新宿3丁目あたりのカウンタ-バ-で


1人ヤケ酒をアオリ・・青梅街道をホロ酔いで中野坂上方面まで歩いていた頃に


星空を見ながら口ずさむのは・・・必ず「歌謡曲」という・・・「仮想敵のジャンル」だった(実話)


 

 

アマチュアのバンド時代に広島市内のジャズ喫茶に出演していた頃


店のオ-ナ-が「都はるみ」の大ファンで、ロック喫茶なのに店内に彼女の「アンコ椿は恋の花」の


ポスタ-が貼ってある・・という・・信じられないセンスの店で(笑)僕達は「Hold on I'm Comin'」 を


熱唱していたのだったが・・・何でも気になるとチェックしないと気がすまない僕は


都はるみのこの曲を聴いた瞬間に「アッ!これってソウルフル・・めっちゃカッコイイ」と感じた


だが、まあ、演歌というジャンルへの「ある種の偏見」もあったので、その後の彼女の歌った曲への


関心は無かったのだ・・・が・・・いつだったか?はっきりした記憶は無いけれど・・・


コンサ-トツア-中の札幌で、ある有名なゲイ・バ-に入った


とても楽しいスタッフ達の中に、演歌を歌わせたら都はるみにも負けない!という


通称「はるみ」(だった・・かな・・)が「ねえねえタクロ-私の歌を聴いてくれる?」っていうので


「いいなあ・・で・・何を歌ってくれるんだい?アンコ椿・・なら・・俺も歌えるぞ-」


そこでカレが歌ったのが「大阪しぐれ」と言う、僕が知らなかった曲だったのだが・・


正直に言って歌詞は「女性が男性に、従う?」かのような内容で「やっぱ演歌は古い」と感じたが


何と言っても大作曲家の市川昭介のメジャ-コ-ドで始まる演歌は「アンコ椿・・」に始まり


長山洋子の「めぐり逢い」とか、実に愛すべきシンプル巡回コ-ドのメロディ-が秀逸で


「大阪しぐれ」も本人歌唱のレコ-ドを聴いたが・・さすがに「都はるみ節」が素晴らしく


「あ-俺は演歌とか歌謡曲とか、どうでも良かったけど、ただしメ-ジャ-コ-ドの曲の中には


けっこう好きな曲があるみたいだな」と・・遅まきながら気づいた瞬間だった


 

 

ちなみに他に、演歌だけれどメジャ-進行で作られている曲で、けっこう「好きなんだ」な曲は


「宗右衛門町ブル-ス」「函館の女」「港町ブル-ス」「北国の春」「王将」「男はつらいよ」


「時の流れに身をまかせ」「長崎は今日も雨だった」「矢切の渡し」あたり・・か・・ちょっと古かったね


 

 

さて、ミニアルバム「ラジオの夢」3曲目は「骨まで愛して」


これはもう・・原曲の城卓也が歌うカントリ-系バンド風のアレンジが


あの頃の流行歌の中でも「斬新さ」で群を抜いていたし、エレキギタ-が聴こえるサウンドなんて


歌謡曲というイメ-ジでは、まさにnewだったので、僕が飛びついたのも当然だったと思う


「ぷらいべえと」というアルバムで敬愛する作曲家、浜口庫之助の「夜霧よ今夜も有難う」を


カバ-した時のレコ-ディングで、僕が8ビ-トのフラットロックなギタ-ストロ-クで


ドラムとベ-スを引っ張った時の「気持ち良さ」を再現したくて、アレンジの武部聡志に


デモテ-プを渡したら・・・さらに「上を行く」ノリノリのドゥ-ワップ感覚のブラスアレンジで


(アルト・テナ-・バリトンの、サックス3本によるセクションは最高!)


とにかく最高のフィ-リングを作り上げてくれて、思わずスタジオで歓喜の雄叫びを上げたのだ


また1つ「想い出に残るレコ-ディング」が増えた・・心から幸せである


     2024年10月23日  拓郎