岡山県瀬戸内市は、古墳時代から「須恵器」の産地として栄えてきた土地です。朝鮮半島から伝わってきたこの硬質で青みがかった灰色の焼き物は、食器や祭祀の道具として、人々の暮らしを支えてきました。
須恵器はその後徐々に姿を消していきましたが、平安時代になると、須恵器の技術を受け継ぐ焼き物として、備前焼が出現します。釉薬を使わず、土と炎のみによって焼き上げることで、窯の中の炎や灰が生み出す「景色」は一つとして同じものがありません。偶然と技が重なって生まれる、唯一無二の表情が魅力です。
江戸時代には、瀬戸内市邑久町虫明で、京焼の流れを汲むもう一つの焼き物「虫明焼」が作られ始めました。虫明焼は、緑がかったナミグスリ(灰釉)と、薄作りの端正な姿を特徴とし、茶の湯の器として高く評価されてきました。
そして2016年には、須恵器を現代によみがえらせる取り組み「サブスエPJ」が始動。市内の陶芸家たちが古代技術の再現に挑んでいます。
本展では、瀬戸内市の須恵器・備前焼・虫明焼を手がける5名の作家を紹介します。古代の造形を現代的に展開する作品、素材と焼成にこだわり新たな表現を追求する作品、伝統を受け継ぎながら新たな表情を生み出す作品など、それぞれの作家が異なる視点から陶の可能性に向き合っています。
さらに今回は、こうした焼き物を特別なものとして鑑賞するだけでなく、日々の暮らしの中で楽しんでもらうため、作家の器を定期的にお届けする「やきものの定期便」も併せてご紹介します。
古代から続く陶の文化と、現代の作り手たちの感性。その両方に触れながら、暮らしの中でやきものを楽しむきっかけとなれば幸いです。