VUCA時代と呼ばれる混沌とした時代の中で求められるのは、社会に根付く既成概念から自らを解放して新しい視点で時代と向き合っていく姿勢だと言われるようになりました。ですが、アーティストはすでに、既存の概念や方法論を疑い、自らの意思で問題意識を持ち、独自の視点で分析し、新しい方法で表現してきた存在です。
それは時に、見過ごされてきた小さな声や日常の中では気付きづらい社会構造や歴史の歪み、失われていく自然の生命力などといった、世の中にありふれたマクロな目線の言葉では見えてこないことを、個別の物語を通してわたしたちに伝えてくれます。
世界は複雑に絡み合い、ひとつの課題を解決するためには、経済や政治、科学、文化にまたがることが多くあります。しかし、多角的な視座を持つことは既存の社会通念の中では多くなかったかもしれません。だからこそ、これまでの概念にとらわれず、分野を横断しながら思考することが必要な時代に、これからの「変革」をともに考える機会として、多様な世界への眼差しが集う展覧会を行います。
キュレーター・山峰 潤也