日本列島における陶の歴史は、古墳時代に朝鮮半島から伝わった須恵器に始まります。灰被りの無釉陶器は、生活を支える道具として生まれ、やがて平安時代には岡山・伊部の地で備前焼へと受け継がれていきました。
日本最古の焼き物のひとつである備前焼は、釉薬を用いず、土と炎だけでかたちと景色を生み出す技法を、1000年以上にわたり継承してきました。偶然が生み出す窯変、素朴で強靭な土肌、「育てる器」とも呼ばれるその佇まいは、使い続けることで表情を変え、時とともに味わいを深めていきます。その背景には、変化を受け入れ続けてきた歴史と、独自の美意識、そして創造の精神が息づいています。
本展では、備前焼の新たな表現に挑む4名の作家による作品を紹介します。
素材・工程・造形・手法といった多様な軸から表現を探求し、伝統と現代、記憶と更新のあいだを行き来しながら、根源的な素材と向き合い、新たな陶のかたちを立ち上げようと、日々実践を重ねています。
また、私たちは今、あらゆるものが急速に変化し、消費されていく時代を生きています。
土をこね、火にくべ、時間をかけてかたちを生み出す——
この原始的な行為は、創造とは何かをあらためて問い直す営みでもあるように感じられます。
本展を通じて、現代における新たな備前焼のあり方を追求する作家たちの実践の痕跡に触れながら、その歴史と可能性をあらためて見つめ直す機会となれば幸いです。
そして、作家たちの表現を通じて、備前焼という焼き物がいかに開かれた存在であり、いまもなお新たな表現が生まれ続けていることを知るきっかけとなることを願っています。

