近年、Vtuberは単なるネット文化の一部ではなく、エンタメ業界全体を揺るがす存在に成長しました。YouTubeやTikTok、さらに企業の公式プロモーションまで、活動の幅は広がり続けています。その背景には「声」と「キャラクター」を通して、現実の自分とは違う新しい自分を表現できる魅力があります。
その一方で、Vtuberとして活動するには、まず「デビューのきっかけ」が必要です。そこで重要になるのがオーディション。
事務所やプロジェクトが行うオーディションに合格すれば、プロのサポートを受けながら活動できるため、多くの人にとって夢を叶える大きな第一歩となります。
本記事では、Vtuberオーディションの基本から、合格するためのポイント、さらには年齢層ごとのアプローチの仕方までを詳しく解説していきます。
Vtuberオーディションとは、新しいバーチャルタレントを発掘するために事務所が実施する選考です。従来のタレントやアイドルのオーディションと似ていますが、求められるスキルは少し違います。
例えば、見た目やダンスよりも「声」「トーク力」「キャラクター性」が重視されます。声を通して世界観を作り上げるため、俳優や声優のオーディションに近いともいえるでしょう。
さらに、配信という特性上、長時間話し続けられるスタミナや、リスナーとの距離を縮める柔軟さも大切です。
つまり、Vtuberオーディションは単なる「声が良い人」を選ぶ場ではなく、“人柄”と“個性”をキャラクターを通して表現できる人を探す場所だといえるでしょう。
Vtuberを目指す際、多くの人が迷うのが「企業所属で活動するか」「個人で始めるか」という選択です。それぞれに明確な特徴とメリット・デメリットがあるため、自分のスタイルや将来の目標に合わせて選ぶことが大切です。
事務所に所属する大きなメリットは、活動の基盤を整えてもらえることです。一般的に、企業は以下のようなサポートを提供してくれるケースが多いです。
上記をすべて個人で用意するとなると、数十万円から百万円単位の初期費用が必要になる場合もあります。しかし企業に所属すれば、ほぼゼロからでもVtuberとしてデビューできるのです。
また、事務所には既存のファン層や知名度があるため、デビュー直後から注目を集めやすいのも魅力です。大手事務所に所属すれば、数万人単位の登録者を一気に獲得することも珍しくありません。
ただし、企業所属には制約も伴います。
キャラクターの設定や発言内容に制限がかかることが多く、自分の好きな配信スタイルを完全に貫くことは難しい場合があります。場合によっては、「キャラの持ち主は企業」にあるため、途中で辞めたとしてもそのキャラクターを使い続けることはできないケースも。
企業所属型のメリット
企業所属型のデメリット
一方、個人でVtuberとして活動する「個人勢」には、自由度の高さが大きな魅力です。配信内容、活動スタイル、キャラクター設定まですべて自分で決められるため、自分の世界観を表現しやすく、コアなファンを獲得しやすい傾向にあります。
ただし、個人で始める場合はすべてを自分で準備しなければならないのがデメリットです。例えば、Live2Dモデルの制作依頼だけでも数万円から数十万円かかりますし、パソコンやオーディオインターフェース、照明などをそろえると初期費用は軽く数十万円を超えることもあります。
さらに、配信スケジュールの管理、SNSでの宣伝、ファン対応なども自分で行わなければならず、時間と労力をかなり消費します。
その一方で、キャラクターの権利は自分にあり、活動方針も自由です。途中で方向転換したり、新しいキャラクターを追加したりと柔軟な動きができるのも大きなメリットです。収益化に成功すれば、すべて自分の利益として受け取れるため、やり方次第では企業所属以上のリターンを得られる可能性もあります。
個人勢のメリット
個人勢のデメリット
オーディションは基本的に「企業所属型」を希望する人向けに行われます。サポートを受けながら活動したい人や、より大きな舞台で挑戦したい人にはおすすめです。
オーディションの流れは事務所によって少しずつ異なりますが、一般的には以下のようなステップで進められます。
この流れを見ると、単に「声が良い」だけではなく、誠実さや活動の継続意欲が重要視されていることが分かります。
現在開催中の注目VTuberオーディションを18件まとめました。オーディションの特徴や応募条件、流れを確認し、自分に合ったオーディションに挑戦してみましょう。
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No |
オーディション名 |
特徴・サポート内容 |
応募条件 |
歓迎条件 |
選考の流れ |
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1 |
Voice Planet(ボイスプラネット) |
声を活かした活動に特化。プロデューサーとの面談、ボイストレーニング、オリジナルキャラ制作、ボイスドラマ出演などサポートが充実 |
20~49歳の健康な方、学生除く、性別・経験不問、日本国籍または永住権保持 |
声優志望、活動と仕事を両立したい方、新しい挑戦をしたい方 |
応募 → 歌声録音 → 音声送信 → 審査通過者に個別コメント |
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2 |
ホロライブ hololive production Audition |
大手事務所でのオーディション。男性向けホロスターズも随時募集 |
18歳以上、日本在住、国籍・性別不問、夢や目標がある方 |
配信経験者、歌・演技・ダンス・お笑い経験者、マルチリンガル歓迎 |
書類選考 → 複数回の適性審査・面談 → 合格通知 |
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3 |
ハコネクト バーチャルタレント常設オーディション |
女性VTuber向け事務所。配信・イベント・音声作品など幅広くサポート |
18歳以上の女性、2年以上継続配信可能、週4回以上活動可能、非喫煙者、他事務所未所属 |
配信実績や声優・歌手経験がある方、スケジュール調整可能な方 |
1次:自己紹介動画提出 → 2次:課題実技 → 3次:オンライン面接 → 最終:都内オフィス面接(オンライン可) |
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4 |
RIOT MUSIC ARTIST AUDITION |
音楽活動中心のVTuberオーディション。自由度高く活動可能 |
18歳以上の女性、歌唱・配信活動に自信のある方、東京都内通勤可能 |
配信・ダンス・デザイン経験者、外国語対応可能、社会人経験あり |
書類選考 → 一次面談 → 二次実技 → 最終面談 |
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5 |
VTuber事務所「零」新規タレントオーディション |
新設事務所の1期生募集。デビューサポート充実 |
18歳以上、日本在住、心身健康、1年以上継続活動可能、SNS更新可能、週4回以上活動確保 |
他メンバーと協力できる方、VTuber活動意欲が高い方 |
記載なし |
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6 |
星めぐり学園VTuberオーディション |
個性重視のVTuberグループ。自由度の高い活動が可能 |
18歳以上、週5回以上配信、1年以上継続可能、日本在住 |
配信経験、パソコン操作、声・トーク力、ゲームスキル、外国語対応 |
一次 → 二次 → 最終選考(各選考通過者に次の詳細通知) |
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7 |
Brave group総合オーディション |
総合オーディションで、自分に合ったプロジェクトを選べる |
18歳以上、1年以上継続活動可能、プロジェクト方針に沿った専念 |
記載なし |
1次:書類・動画・音声審査 → 2次~最終:プロジェクト別審査 |
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8 |
すぺしゃりてVTuberオーディション |
ゲーム配信に特化した女性VTuber事務所。常設オーディション |
18歳以上、日本在住、1年以上活動可能 |
ゲーム大会入賞経験、配信実績、英語などの言語スキル |
書類選考 → オンライン面談 → オンライン配信審査 → 最終面接 |
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9 |
UniVirtual VTuberオーディション |
音楽を軸に活動するVTuber事務所。未経験者も対象 |
歌や音楽が好き、1年以上活動可能、週4日以上配信、16歳以上 |
歌唱・楽曲制作・ゲーム配信・クリエイティブ制作経験 |
書類審査 → 面談審査 → デビュー |
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10 |
Projection(プロジェクション) |
クリエイター事務所によるVTuberオーディション。サポート充実 |
18歳以上、女性(性自認含む)、初月50時間配信可能、IRIAM未配信 |
記載なし |
書類審査 → オンライン面談(顔出しなし) → 合格通知 → デビュー準備開始 |
Vtuberオーディションで合格しやすい人を一言で言うと、「個性を持ち、それを続けられる人」です。単に声が良い、見た目が可愛いだけではなく、長期的に活動を継続できるか、ファンや事務所とどのように関わるかが重視されます。以下に具体的な特徴を詳しく解説します。
オーディションに合格した後、重要になるのが「活動を続けられる力」です。Vtuber活動は短期間で結果が出ることは少なく、数か月で辞めてしまう人も珍しくありません。
そうなると、ファンは応援の意欲を失い、事務所もサポート計画を見直さざるを得なくなります。
逆に、地道に定期配信を続けられる人は、視聴者との信頼関係を築きやすく、結果としてファンが増える傾向があります。
例えば、週2~3回でも決まった時間に配信することで、視聴者が「このVtuberの配信は見逃せない」と思う習慣が生まれるのです。継続力はVtuberとしての長期的な成功を左右する大きな要素です。
Vtuberの魅力は、視聴者との双方向性にあります。コメントに反応したり、視聴者からのリクエストに柔軟に対応できる人は、人気が出やすくなります。
例えば、ゲーム配信中に視聴者が「この武器を使ってほしい」とコメントした場合、それに応えることでファンは自分が参加している感覚を持てるのです。
また、トラブルやネガティブなコメントにも冷静に対応できるかどうかもポイントです。
コミュニケーション力の高さは、事務所から見ても「任せられるタレントかどうか」の判断基準になります。
同じゲームや話題を扱っていても、話し方や雰囲気によって全く違う魅力を出せる人がいます。オーディションでは、「自分だけの武器」を持っているかどうかが合否を左右します。
例えば、声のトーンやアクセント、独特の語尾や言い回し、あるいはユニークな趣味や知識を配信に取り入れることで、他のVtuberとの差別化ができるでしょう。単なる模倣ではなく、自分らしい表現を持つことが合格への近道です。
オーディションに挑戦する前に、準備をしっかり整えることで合格率は大きく変わります。ここでは具体的なステップごとに解説します。
まず最初に行うべきは自己分析です。「なぜVtuberになりたいのか」「どんなキャラクターを演じたいのか」「自分の強みや得意分野は何か」を紙に書き出してみましょう。
この作業により、自分が目指す方向性が明確になります。例えば、「歌配信を中心に活動したい」「ゲーム実況で視聴者を楽しませたい」「アニメ知識を活かしてトークを盛り上げたい」などの具体的な目標が整理できると、面接や書類で説得力のあるアピールが可能です。
Vtuber活動では、視聴者に快適な視聴体験を提供することが重要です。特に音声の質は魅力を左右するため、最低限のマイク・PC・ネット環境を整えることは必須です。
上記が揃っていないと、せっかくの声や表現力も十分に伝わりません。オーディションの段階で「配信準備が整っているか」も見られるため、事前にテスト配信を行い、改善点を洗い出すことがおすすめです。
オーディションでは、自分の声を客観的に聞かせるサンプル音声が必要です。朗読やフリートーク、歌などを録音して、自分の声の強みや改善点を確認しましょう。
例えば、声のトーンや抑揚、話すスピード、発音の明瞭さなどをチェックします。練習を重ねることで、自信を持ってオーディションに臨むことができ、面接官にも好印象を与えられます。
事務所ごとに特色が異なるため、自分のスタイルに合った事務所を選ぶことが合格後の活動を充実させるカギです。例えば、歌や音楽活動に強い事務所、バラエティ色が強い事務所、ゲーム実況中心の事務所などがあります。
事前に公式サイトや過去のデビュー事例をチェックし、自分の希望する活動とマッチしているか確認することが重要です。
ここで代表的な事務所をいくつか紹介します。
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事務所名 |
特徴 |
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ホロライブ |
世界規模で展開する女性Vtuber事務所。歌・ゲーム実況・雑談の幅広さが強み |
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にじさんじ |
個性派が多く、バラエティ力が重視される。トークが得意な人におすすめ |
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Re:Act |
音楽活動に力を入れており、歌が得意な人向け |
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.LIVE(どっとライブ) |
バラエティや実験的な企画が多く、独特の色を出しやすい |
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中小規模事務所 |
未経験者歓迎のケースが多く、挑戦のハードルが低い |
それぞれの事務所で「求める人材像」は異なるため、自分の得意分野と照らし合わせて応募することがポイントです。
「Vtuberは若い人向け」というイメージを持たれる方もいますが、実際には30代以上の応募者も増えています。
落ち着いた声質や大人ならではの人生経験を活かしたトークは、むしろ他の層では出せない魅力です。
また、視聴者層も10代~20代だけでなく、30代・40代のファンも多いため、同世代の共感を得られる強みもあります。年齢を理由に諦める必要はまったくありません。むしろ「大人だからこそできるVtuber活動」が確立できれば、唯一無二の存在になれる可能性があります。
Vtuberのオーディションに合格するためには、事前準備も欠かせません。どのような準備が必要になるのか、以下で詳しく見ていきましょう。
Vtuberの魅力を支える大きな要素は「声」です。聞き取りやすい声、感情のこもった演技ができる声は、多くの視聴者を引きつけます。
滑舌の改善、腹式呼吸を使った発声、声のトーンを使い分ける練習などを続けることで、表現力が大きく広がります。最近では無料のボイストレーニング動画やアプリも充実しているため、自宅で取り組むことも可能です。
オーディションでは「この人はすぐにでも配信できそうか」という点もチェックされます。そのため、実際に自宅でテスト配信をしてみるのがおすすめです。
ゲーム実況、雑談、歌枠など、自分が得意とするジャンルを試しながら、沈黙を避ける工夫やコメント対応の練習をしておくと安心です。また、機材の扱いに慣れておくことも、実際の活動に役立ちます。
書類や面接でよく聞かれるのが「あなたの強みは何ですか?」という質問です。歌が得意、笑わせるのが好き、アニメの知識が豊富、リスナーと距離感を縮めるのが得意など、何でも構いません。
重要なのは、自分だけの個性をきちんと整理し、それをオーディションで具体的に伝えられるようにしておくことです。他の応募者と比較して「自分だけの色」を出せるかどうかが合格へのカギになります。
Vtuberのオーディションに参加する際には、いくつかの注意点があります。
近年、Vtuber人気の高まりにより、オーディションを装った怪しい募集も見られるようになっています。公式サイトや運営会社の実績を確認し、信頼できる団体かどうかを見極めることが大切です。
特に「高額な機材購入を義務付ける」「不明確な契約を迫る」などのケースには注意しましょう。
Vtuber活動は想像以上に時間と労力がかかります。毎日の配信準備、ファン対応、SNS運用など、多方面での活動が求められます。オーディションに合格しても、無理をすると体調を崩したり、継続が難しくなったりする可能性があります。
自分のライフスタイルと両立できるかを事前に考えておくことが大切です。
合格したからといって、自動的に人気が出るわけではありません。むしろスタートラインに立っただけで、ここからが本当の勝負です。
定期的な配信、リスナーとの交流、コンテンツの工夫を積み重ねて初めてファンが定着します。「合格した後に何をするか」を意識することが、長期的な成功につながります。
Vtuberとして活動するための一歩は、自分に合ったオーディションを見つけ、挑戦することから始まります。企業所属型で安定した環境を得るのか、個人勢として自由な表現を追求するのか、その選択によって未来の姿は大きく変わります。
オーディションでは「声」や「演技力」だけでなく、自己表現の幅や継続力も見られるため、事前の準備と練習が欠かせません。また、10代・20代・30代以上など年齢層によって求められるアプローチが異なる点も意識しておきましょう。
数多くの応募者がいる中で合格をつかみ取るのは簡単ではありません。しかし、準備を重ね、自分の強みを的確にアピールできれば、誰にでもチャンスがあります。Vtuberは、現実ではなかなか実現できない「新しい自分」を形にできる世界。だからこそ、挑戦する価値があります。
オーディションは夢を叶えるための入り口にすぎません。その先には、ファンとの出会いや、新しい可能性を広げる舞台が待っています。少しでも興味を持っているなら、迷わず挑戦してみることをおすすめします。