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石橋凌『最果て』ライブバージョン@キネマ倶楽部 映像配信スタート!

9月26日に石橋凌『最果て』ライブバージョン@キネマ倶楽部を以下のサイトにて映像配信中!!
 
<レコチョク>
http://recochoku.com/ishibashiryo/
 
<ミュゥモ>
http://video.mu-mo.net/s/search/tune_top.do?id=131283
 
<TSUTAYA>
http://m.tol-p.jp/packagejoho/?serviceid=EG&packageid=10350
 
<iTunes>
http://itunes.apple.com/jp/artist/shi-qiao-ling/id357716860 
 
 
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石橋凌、『「表現者」~ 我 歌う 魂こがして~』
「最果て」配信に寄せて
 
2012年1月14日(土)。鴬谷・東京キネマ倶楽部で、石橋凌初のソロ・ワンマン・ライブ『「表現者」~我 歌う 魂こがして~』が開催された。
 
2011年12月に、キャリア初のソロ・アルバムをリリースした石橋凌。1977年に音楽活動をはじめ、34年を経て完成した初のソロ・アルバム。タイトルは石橋凌自身をあらわす言葉である『表現者』。コンセプトは「永遠不変」。それは流行に左右されず、時とともに熟成していく音楽を指す。そのための音作りとして、「深くて豊かな音を意識して、聞き手の脳裏に映像が浮かぶことを心掛けた」という。故に、楽曲は全て本人が詞曲を手がけている。映画的にいえば監督、脚本、出演をすべて手がけた作品ともいえるのかもしれない。それこそが、バンドを脱退して、ソロ・アルバムを作った理由なのであろう。
 
そんな、期待度の高さもあってか、初のソロ・ワンマン・ライブのチケットは即日即完となり、ネットオークションで数万円の値がついたというプレミアムな夜。しかしながら大規模な会場ではなく、大人の香りのする東京キネマ倶楽部を会場に選ぶところに、今を生きる石橋凌のこだわりを感じるのだ。
 
当日演奏されたナンバーは全24曲、2時間半を越えるボリューム満点のステージ。オープニングSEは、意外にも 2002年に会場である東京キネマ倶楽部で撮影された、まるで短編映画のような「カクテル・トゥナイト」のミュージック・ビデオだった。
 
1曲目に奏でられたのは、サプライズ感の強い「AFTER '45」。松田優作監督、石橋凌主演の映画『ア・ホーマンス』のエンディングを飾った名曲であり、戦後生まれの男の気持ちを歌いあげたナンバーだ。俳優と音楽活動がクロスするターニングポイントとなった楽曲でもある。歌詞のラストには新たにひとこと「試される2011」と、言葉が書き足されていることにも注目したい。あとから聞いた話だが、当日の衣装は『ア・ホーマンス』撮影時に着ていたコートだったそうだ。ソロライブ1曲目で同じコートを着て「AFTER '45」を選び歌うことに、石橋凌のケジメや決意が感じられる。
 
続いて演奏された「最果て」は、体温が一気に上昇する、スパニッシュな風が吹くナンバー。見上げる高層ビルとホームレスの住処との対比を“現実の雨”へと結びつけるストーリー・テイリングの妙。後半、リズムがヒートアップする熱き展開がたまらない。
 
石橋凌を支える円卓の騎士と呼べるバンドは、盟友である池畑潤二(Drums)、渡辺圭一(Bass)、藤井一彦(Guitar)、伊東ミキオ(Keyboards)という鉄壁のメンバーが参加。さらにMCで「RCサクセションの・・・・・・」といった下りで梅津和時(Sax)も加わり、濃密なグルーヴを堪能させてくれる圧巻のステージングが繰り広げられていく。
 
ARBの1stアルバムに収録された人気ナンバー「淋しい街から」では、美しきピアノがたゆたうイントロが、絶妙な味わい深さを生み出してくれた。故郷を持つリスナーが聴けば号泣間違いない、心の奥底の心情を吐き出すリアルな心模様。熟成された大人のバンドアレンジが心に染み渡る。
 
続く「乾いた花」では、儚き夢の行く末のリアルさを描きながらも、ブルージーな香り漂う大人のヴォーカルを披露。間奏での痺れるピアノ&サックス名演にも注目して欲しい。もちろんラストは感情をアップリフトさせるパンキッシュな展開へと豹変していく。
 
アコースティックギターによる調べがせつなさをくすぶる「待合室」。誰しもが人生で経験をする挫折の瞬間の先にも道は続いていくことを、あきらめてはいけないことを教えてくれる叙情感溢れるナンバー。旅の中継地点、駅の“待合室”では、たくさんのストーリーが生まれ、そして交差していくのだ。
 
石橋凌は人との“縁(えにし)”を大切にする。そもそも師である松田優作の死が俳優を生業とするきっかけとなり、直接会ったこともないファンとの信頼関係が音楽活動への再生に大きく影響する。運命とは偶然の必然。せつせつと歌いあげるブルースが人間関係の深みを、ゆっくりと紐解き、距離感を近づけていく。そんなナンバー「縁のブルース」が心に染み渡る。
 
今回のライブで注目すべきは、アルバム『表現者』でセルフカバーされたバンド時代のナンバーはもちろん、人気ナンバーである「Just a 16」、「ダディーズ・シューズ」、「Heavy Days」、「PALL MALLに火をつけて」、「パブでの出来事」、「R&R AIR MAIL」、そして大好きな「RESPECT THE NIGHT」が聴けた貴重な選曲にも注目したい。
 
MCでは、オーディエンスの頬を弛ませるユーモア溢れるトークが続き、「参加型ライブ」ということでメンバーから客席へサイン入り卵形シェイカーがプレゼントとして投げ込まれていく。そして、軽快なロックンロール・ギターが奏でられ、ポジティヴィティ溢れるアッパーチューン「形見のフォト」がはじまった。オーディエンスによるシェイカーでのリズムと、カントリー調なピアノが混ざり合い様々な感情を呼び起こしてくれる。
 
後半はロックンロールなナンバーが続き、オールスタンディングで熱く盛り上がる会場。ステージサイドの踊り場に、ホーンセクション隊が登場するなど楽曲ごとに多彩な演出が続いていく。そして、ソウルフルなアレンジが魅力な新曲「TOKYO SHUFFLE」に注目をしたい。人生をカードゲームにたとえた、R&B調の跳ねるトリッキーなビートがたまらないロックチューンだ。なお、“シャッフル”には、ダブルミーニングで「彷徨く(うろつく)」、「(彷徨う)さまよう」の意味もあるという。チャンスを賭けて上京した街、東京でギリギリまで諦めずに成功を追い求める姿が目に浮かぶかのような、気持ちの強さが伝わってくるナンバーが力強い。STANDING ON THE STREETで通りを眺めてきた石橋凌の視線が、今もなお、ストリートに目を向けられていることがよくわかるナンバーだ。
 
続いてプレイされるのは、公式ツイッターで募集された独自コミュニティ「Soul Mate」へ向けられたように思えるナンバー「Dear My Soul Mate」。まさに、人とのつながりが音楽の共感の輪を広げていくのだ。
 
「今の時代にもう一回唄いたくて、これからも叫び続けます!」とのMCで「喝!」が披露された瞬間に、熱気で会場は温度があがったのはいうまでもないだろう。1stアルバム『A.R.B』に収録されたライブでの代表曲。とはいえ、書かれた言葉は今の時代にも通用するメッセージ性を持つ感性の鋭さ。人とのつながり、“縁(えにし)”の大切さを説いているのは言うまでもない。アレンジもオリジナルを凌駕するロックンロール最高峰な仕上がりが痛快だ。
 
そして本編ラストを締めくくるのは、アルバム『表現者』から、壮大なバラード「我がプレッジ」。昨年3月11日に起きた震災の記憶を引きずっていたなか、この楽曲が持つ大きく包み込むような空気感に救われた思い出が蘇る。そもそも、震災後以降に書かれた楽曲かと思えば、それ以前に完成されたナンバーだという。しかしながら、今聴くと意味が変わってくるから音楽は深い。石橋凌が自らに誓いをたて鼓舞する、強き思いが込められている。
 
さらにアンコールでは、「I Got My Mojo Working」、「Route 66」などスタンダードなロックンロールが続き、アップテンポの曲に乗せて「NO MORE WAR!」、「NO MORE ピカドン!」と、オーディエンスがシンガロングする反戦、反核のナンバー「PIKADONの詩」を熱く歌いあげる。
 
そして、ラストはもはや説明を必要としない、日本を代表するロックンロールの名曲「魂こがして」。梅津和時のサックスと伊東ミキオのキーボードと向かい合い、一期一会なアレンジで表現。人生を揺さぶる、過剰なほどに熱き歌声のエネルギーに注目。まさに、音に耳を傾けることでスポットライトを浴びて熱唱する男の姿が浮かびあがってくる。
 
その後、アンコールは鳴り止まず、3度ステージに登場するメンバー。ラストはカバー曲で「STAND BY ME」。まさに会場全体を包み込むような大合唱で大団円を迎えたのである。
 
石橋凌は、アルバム『表現者』をこう語っていた「今のこの時代を、今の自分から見た切り口で、素直にリアルに歌っていきたい。いつまでも人の心に、魂に残る歌を作って、歌い続けたい。『好きな音楽をやって生きていきたい』と夢見て上京した、10代の頃のようにね」。まさに、「我 歌う 魂こがして」だ。石橋凌は、自分の生きざまを、感性を信じて、これからも一生歌い続けていく、そんな決意が伝わってきた夜だった。
 
テキスト ふくりゅう(音楽コンシェルジュ)
http://fukuryu76.blogspot.jp/