常にアジアの先駆者であり続ける小室哲哉、
そして、その音を伝え続けるglobe

Q:globeの最新作を教えてください。
A:『globe2 pop/rock』です。1枚の絵が盃に見えたり、向かい合っている顔に見えたりする“ルビンの盃”のようなところがあります。たとえばpop/rockを分数と見たらrockが基本ですが、URLと見たらpopのほうが大きなディレクトリになります。サウンドも歌詞も、そうした多義性が特徴でしょうか。

Q:アジアから直感的に思うことをお知らせください。
A:∞(無限大)です。『globe2 pop/rock』収録曲「Asian Night」では、僕なりのアジア観の一端を音楽にしました。先程の“ルビンの盃”を思わせる代表曲でもあります。歌詞に“日出ずる国”と書きました。これは日本だけど日本だけではないような……。そもそもアジアという言葉の語源は、古代アッシリア(ティグリス・ユーフラテス川岸に栄えた)帝国の言語で“日の出”だったという説もあるそうですから。ヨーロッパは逆の“日没”です。アジアの人々の中には、“自分達は日出ずる国に生まれた”的な、共有のプライドがある気がしませんか?それが∞(無限大)を感じさせる源泉ではないでしょうか。

Q:アジアで行ったことのある地域と、その思い出を教えてください。
A:最近は、『globe2 pop/rock』収録曲「Love goes on!!」のビデオクリップ撮影も兼ね、北京に行きました。まさに“日出ずる”勢いを感じました。97年には、北京、上海、香港、台湾でGROOVE MUSEUMというコンサート・ツアーも行いました。現地の方々は、目が点になったでしょうね。だけど、僕なりのプレゼンテーションでした。日本で売れた音楽の二次利用ではなく、東京よりも最先端な、当時世界的にもっとも新しい音楽を提供するのが狙いでしたから。事実、あのときに試みたトランスDJとVJによるコラボレーションは、今や世界標準になりました。

Q:アーティストとしてアジアでこれからしなければいけないと思っていることをお知らせください。
A:お互いをもっと親密に感じられる活動です。globeは10周年という一区切りを終え、新たな試みも検討中です。globe featuring〜のようなスタイルを。それがアジア諸国のヴォーカリストやラッパーとのコラボレーションになる可能性もあります。また、フランチャイズではありませんが、globe thai landやglobe vietnamという企画もあり得ます。もちろん僕が責任を持ってプロデュースします。中国かインドの資本などがバック・アップしてくれたら、まさにアジア規模の展開が可能になり、文化交流の一翼を担えるでしょうね。

Q:2006年の抱負を聞かせてください。
A:06年は音楽配信がさらに重要なキーワードになるでしょう。だから、『globe2 pop/rock』でも、配信を意識したサウンドも試みました。個人的には、高音質配信の技術開発も行う「High Definition Sound laboratry(HD Sound Lab.)」のエグゼクティヴ・アドバイザーも務めています。もしもアジア各国の最新ヒット曲がまとまっている配信サイトができれば、もっとお互いを身近に感じられるだろうし。アジア規模のヒット曲が生まれるかもしれません。結果、シンガーやバンドの往来も活発になるだろうし。そうした未来を期待しつつ、globeも積極的に関与するつもりです。


ライター:藤井徹貫
インタビュー:小室哲哉