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三浦大知「U」オフィシャルインタビュー

2017.08.02

――新曲「U」は軽快で心が躍る曲ですが、制作にあたっては、今年3月発売のアルバム『HIT』からの流れを意識したところもあるんですか? 三浦:『HIT』と地続きだと思います。心地良くて、温かさもあって、でもグッとくるところもあって、みんなの背中を押せる曲っていう。ただ、『HIT』はバラードが1曲だけで切ない系はやってなかったんです。「U」は、Aメロ・Bメロにはタテのリズム感があるけど、サビはバラード的なメロディーなので、『HIT』であまりやってなかったところを盛り込めたなと思ってます。
――トラックメイクには、ブルーノ・マーズの全米1位ソング「That’s What I Like」を手掛けたStereotypesの面々が参加しています。彼らとは2015年に「FEVER」を制作していますが、今回のトラックを聞いたときの印象は? 三浦:自分の好きなバランス感だなという印象がありました。今っぽさを感じる部分もあるし、懐かしさもあるし、バックストリートボーイズみたいなアメリカンポップスのような感じもあるけど今っぽい軽やかさも備わってて臭すぎない。いろんな要素がゴチャっとなってる感じが三浦大知っぽくて好きだなって。

――歌詞はドラマ「脳にスマホが埋められた!」の主題歌の話を頂いてからAKIRAさんと共作されたそうですが、どんなメッセージを込めたんですか? 三浦:ドラマの主人公は、脳にスマホを埋められて人間の建て前と本音がわかるようになるんです。その能力に戸惑いながらも、いろんな人の心に触れて、人として大切なことに気付いたり、周囲のトラブルを解決して成長していく。そうしてちょっとずつ前に進んでいく感じが人間的だなと思ったから温かみのある応援歌にしようと思ったんです。そしたらAKIRAさんから“アップデート”をキーワードにした歌詞があがってきて。日々、自分をアップデートさせて前に進んでいく、そんな歌詞になったと思ってます。
――作詞でこだわった部分は? 三浦:AKIRAさんには1番と2番の“傘”の使い方を提案しました。自分が書く歌詞は精神的なものとか抽象的なものが多いんですけど、敢えてそういう歌詞にしてダンスで視覚的な部分を補うんです。だけど、今回は珍しく風景が浮かぶ情景描写を入れてみようと思ったんです。
――タイトル表記を「U」という一文字にした理由は? 三浦:これはAKIRAさんが歌詞を書いてくれたときから、こうだったんです。だから、そんなに深い意図があるわけじゃなくて。
――ジャケット写真を見たときにスマイルマークを思い浮かべたんです。だから、この曲を聞いたあなたを笑顔にします、みたいな思いも込められているのかなって思ったんですが。 三浦:ジャケットの「U」は虹から着想したんです。虹が逆になって「U」っていう。基本、雨は嫌じゃないですか。晴れてるほうが嬉しい。でも、今回の歌では晴れたから傘が無駄になって、急な雨予報だったけどその傘があったからラッキーというふうに感情が逆転してる。それって物事は考え方とか見方次第だということに繋がるなと。そういうメッセージも込めたかったんで、デザイナーさんに虹が逆になってる感じがいいって伝えたんです。
――今回の楽曲をブラッシュアップしていくときにこだわっていたところは? 三浦:ダンスです。振り付け。ダンスの表現で、この曲をより三浦大知らしくすることが重要だと思ってました。「この曲でこんな風に踊るんだ!?」っていう一種の驚きが生み出せたらいいなと思ってたんです。
――ミュージックビデオを見ると、サビのメロディーはゆったりしてるのに、動きはシャープで躍動美にあふれてるんですよね。 三浦:そこですね。そのギャップ。それがあるといいなと思ってたんです。こういう曲調だったら本来はもう少しメロウな振り付けだったり、グルーヴィーな動きでもいいんですけど、そうじゃなくてちゃんと細かく踊ってるモノにしたかったんです。
――今回のミュージックビデオはワンカメによる一発録りというところも見どころですね。 三浦:本当に一発録りだったんで緊張感がハンパなかったです。最後の雨のシーンまで行ったら後戻りできないし、最初のCG合成のシーンも現場でグリーンバックの緑の布をパッと外してるんです。CG→LED→現実→雨という流れが全部ワンカットで作れたら面白いんじゃないかと。で、「どうやって撮ってるんだろう?」って思わせる作品にしたかったんです。
――ずっと縦方向に移動し続けるダンスも見ものでした。 三浦:あれは50メートルくらい進んでるんです。曲のテーマが「少しずつ前に進む」だから、前に進もうと。俺は下がらない。前に進み続けようと(笑)。普通の一発録りだと、フォーメーションの変化に合わせてカメラが動くから、ダンサーの背景が変わるパターンが多いんです。けど、そうじゃなくて最初に出てきたLEDスクリーンがずっと見えてる状態で、とにかくまっすぐカメラが引いていく。それって動きのごまかしが効かないから勇気がいる一発録りなんです。でも、それにチャレンジできたら面白いものになるはずだって思ったんです。
――2曲目「Complex」は、『HIT』で「Neon Dive」や「Body Kills」を手掛けていたLDN Noiseによるものですね。 三浦:これは今のブルーノ・マーズに代表されるようなディスコ/ソウル系を意識して作りました。ぶっちゃけ、LDN Noiseに「ブルーノ・マーズを超える曲を三浦大知に書くとしたらどんな感じ?」っていうお題で書いてもらったんです。で、このトラックに歌詞を付けるなら恋愛系がいいなと思って。「Neon Dive」も「Body Kills」もLDN NoiseとKanata Okajimaさんのコンビで作ってもらったんで、そのタッグにまたお願いしたんです。
――歌詞にはいろんな感情が絡み合った甘苦い恋愛が描かれています。それをComplexという言葉で表現しているのがポイントですね。 三浦:好きな人に手玉に取られて翻弄されてる。でも、その惑わされてる感じとかフクザツな恋に溺れてる感じも含めてなんだかすごくハッピーだっていう曲です。Complexと聞くと劣等感とか弱点とか自分の嫌いなところっていう意味を思い浮かべる人が多いと思うけど、この曲で「Complexってこういう意味なんだ」って知ってもらえたら(笑)。
――歌詞には4つの色が出てきます。赤青黄の中にシルバーが出てくるところがフックになっているなと思いました。 三浦:僕もそこが歌詞の面白味だと思いました。赤青黄は信号とかでよくある言い回しだけど、そこに予期しない色が入ってくるところがすごくいいなと。いつもある並びの中によくわからない感情が沸き上がってきて、めまぐるしく気持ちが絡み合ってるから君に溺れてるんだ、みたいな。そういう面白味が「シルバー」に集約されてる気がして、すごく素敵な表現だなと思いました。
――「Complex」のコレオビデオは、モロにブルーノ・マーズの「Treasure」を下敷きにしていますね(笑)。 三浦:これはもう完全にオマージュです(笑)。そのままやったんで。
――セットとか照明の感じまで一緒ですからね。画面サイズまで合わせてる。 三浦:画質もチープさを狙って、一回、VHSに落としてみたんです。そしたらさすがに画質が悪すぎて絶えられなかった(笑)。「Complex」は楽曲自体、懐古的なところがあるし、その懐かしさが今の若い世代にとっては新しいみたいな感じが出せればいいなと思ったんで、曲の雰囲気のままストレートに作ったんです。ある種コントを作ってるくらい振り切ってやった方がいいだろうと思ったし、作っていて面白かったです。
――3曲目「Life is Beautiful」は、「劇場版 仮面ライダーエグゼイド トゥルー・エンディング」の主題歌ですが、どんな物語を描こうと思ったんですか? 三浦:映画は、テレビ版の1年後の真のエンディングを描いた内容になっているので、「EXCITE」と曲の主人公が同じ方がいいと思ったんです。「EXCITE」で描いた主人公がいろんな人に出会って、彼らがいろんなことを経験して成長して、それぞれの思いを胸に自分の人生を彩っていく、それぞれの素晴らしい人生に旅立っていく。そうやってハッピーな大団円を迎える感じがエンディングにふさわしいだろうと思って作りました。
――ところで、今回のシングルの店着日である8月1日は、奇しくもFolderのデビュー20周記念日になりますね。 三浦:それを狙ってリリース日を決めたわけじゃないんですけど、Folder20周年、あとは20代最後のシングルになるので、自分にとって大切な曲のひとつになったなと思います。
――Folderからの20年を振り返ると、どんな思いですか? 三浦:なんか、まあ、大人になったなぁっていう感じです(笑)。けど、単純に同じ事を20年……途中5年間休んでますけど、自分が好きなことを20年間続けてこられて、それをみんなにも楽しんでもらえてるっていうのはすごく恵まれてるなと改めて思います。Folder10周年とかソロ10周年のときはそれほど思わなかったけど、20年って10年の倍ではないような気がして……。さすがに重みが違うというか、節目感がありますね。
――Folderの面々とも20周年を祝えたらいいですね。7人全員で記念撮影とかできたら素敵だと思う。 三浦:せっかくですからね。僕も久々にみんなと何かまたできたら面白いかなと思ったりはします。
――9月から自己最多本数となる全国ツアー「BEST HIT TOUR 2017」が始まります。今回のツアーはどんなものになりそうですか? 三浦:ざっくり言うと「2017年のベストヒットだったね」ってみんなに言ってもらえるライブになったらいいなと思ってます。BESTっていう言葉はすごく曖昧じゃないですか。みんなが思うBESTと僕が提案したいBESTは違うかもしれない。だからこそ、「三浦大知のBESTってなんぞや?」の答えがライブで示せたらいいなと。
――ベストアルバム的なBESTと、現時点での最良という意味のBEST、両方ありますからね。 三浦:『HIT』はいろんな人の心にヒットして欲しいと考えて作りましたけど、「いろんな人」っていうのは抽象的でざっくりしてるし、「ヒットさせる」っていうのはピンポイントな狙いだから矛盾してるんです。いっぱいに届いて欲しいけど、グッとフォーカスしたい、みたいな。でも、その矛盾を自分の音楽で埋められたらいいなと思っていたし、今回の「BEST HIT TOUR」もそう。最近改めて思うんですよ、自分って欲張りなんだなって。でも、その欲張りな感じが三浦大知っぽくていいのかなって。それは自分の性格に因るところもあると思うんです。興味本位でいいからいろんなことをやってみたいっていう。それが図らずも三浦大知らしさをつくるひとつのキーワードになってるのかなって最近思うんですよね。

[インタビュー・文/猪又 孝] BACK