WALL_alternative | Art_Music_Culture & Bar

「不在の記憶」

2025/02/14 Fri - 2025/03/08 Sat
EXHIBITION
会場 : WALL_alternative

このたびWALL_alternativeでは、2025年2月14日(金)から3月8日(土)まで、ガラスを用いた作品制作で国際的に注目を集める佐々木類の個展「不在の記憶」を開催します。

 

佐々木類は、「存在の記録や保存に適した素材」としてガラスをとらえ、作品を制作する過程において、その時々の自分と場所を繋ぐための行為として植物や、家の隅などを採集し、透明なガラスに封入することで、目には見えない記憶の可視化を追求しています。

 

WALL_alternativeおよびエイベックス・クリエイター・エージェンシー株式会社は、「MEET YOUR ART FESTIVAL 2022 ‘New Soil’」内アートエキシビション「The Voice of No Mans Land(キュレーター:山峰潤也)」での協働を皮切りに、MEET YOUR ART メディア、そして「MEET YOUR ART FESTIVAL 2024 ’NEW ERA’」内アートフェア「MEET YOUR ARTISTS」と継続的に佐々木との関係性を紡ぎ、これまでは佐々木が存在する場所で採取した植物の作品を中心に、佐々木の作品と活動を紹介して参りました。

 

今回、我々が紡いできた関係性の発展的展開として、佐々木類個展「不在の記憶」を開催します。 本展では、佐々木の活動の拠点である金沢で採集した植物をモチーフにした《土地の記憶》シリーズ《忘れじの庭》シリーズ、部屋の隅を型取りした《隅》に加え、新たな試みとして佐々木がエイベックススタッフと共に、WALL_alternativeが位置する西麻布を中心に、うつろいながら絶えず多様なカルチャーを醸成してきた象徴的なエリアでもある青山・六本木まで、その地の歴史やスタッフの記憶を辿りながら採集した植物を用い制作した作品も発表します。

 

この作品制作プロセスを通じて、佐々木が私たちとの関係性を契機に結びつきを持った土地やそこに関連する人の記憶の中における “微かな親しみ”や“懐かしさ”も知覚し、掬うことを試みます。そして、展覧会会場では、今回の植物採集マップも掲出し、土地の記憶と実際に植物採集をした道のりを辿ることができます。

 

本展を通して、佐々木の作品において通底するテーマである「不在の記憶」の深化を20点以上の作品の展示・販売をお楽しみいただくとともに、日常の中では見過ごしてしまうような周縁に目と心を向けるきっかけになれば幸いです。

 

なお、展覧会初日の2月14日(金)にはオープニングレセプションを開催し、アーティストや主催挨拶も予定しております。
翌日の2月15日(土)には佐々木類とのトークセッションを実施するほか、期間中併設するバーでは本展に併せて開発したコラボレーションメニュー等を提供予定です。

 

最後に、「The Voice of No Mans Land」において両者を繋げ、本展示に対してテキストを寄せていただく予定であった山峰潤也さんのご冥福を心よりお祈りいたします。

 


佐々木類 / Rui SASAKI


写真左:Hanmi Meyer / Bullseye Glass Co.
写真右:“植物の記憶:Subtle Intimacy (2012-2022)” (photo by Yasushi Ichikawa)/2022年

1984年高知県生まれ。身近にある自然や生活環境にインスピレーションを得ながら、主に保存や記録が可能な素材であるガラスを用い、自分が存在する場所で知覚した「微かな懐かしさ」のありようを探求している。
北欧やアメリカを中心に滞在制作招聘を受け、国内外の美術館で展示活動を行う。主な賞歴は、第33回Rakow Commission(2019年、コーニングガラス美術館/アメリカ)、富山ガラス大賞展2021大賞(富山市ガラス美術館)。ラトビア国立美術館(ラトビア)、金沢21世紀美術館など作品収蔵多数。近年の主な個展に「Subtle Intimacy : Here and There」(2023年、ポートランド日本庭園/アメリカ)、「雪の中の青」(2024年、アートコートギャラリー)がある。ニューヨークタイムズ紙や日本経済新聞などで作家特集掲載。現在は、石川県にて制作。


【展示概要】
佐々木類個展「不在の記憶」
会期:2025年2月14日(金)-3月8日(土)※日曜定休
時間:18:00-24:00
会場:WALL_alternative(東京都港区西麻布4-2-4 1F)
入場:無料・予約不要 ※2月14日・15日の一部時間のみ事前申込が必要です。
企画・主催:WALL_alternative
協力:黒澤浩美、山峰潤也、ArtTank
会場構成:山際悠輔
グラフィックデザイン:関川航平


不在の存在
黒澤 浩美/金沢21世紀美術館チーフ・キュレーター

佐々木類は、ガラスを素材に記憶と存在の本質を探求している。或る時々に暮らした場所や、人々との繋がりや縁を結んだ場所で植物を採取し、ガラスに封入するという独自の手法を用いて、場所、空間、時間といった自らの記憶をその植物に託す。植物は灰になり、封印されて残り、見るたびに過去の出来事や感情との関係に向き合うことになる。現代美術における「不在」や「記憶」のテーマを扱う数多くの作家の中でも、佐々木のアプローチはひときわ繊細である。光を透過して静かに佇む作品群は、存在と非存在の境界を探りあて、個人と集団の経験を再考する手段ともなっている。人生におけるさまざまな経験と「記憶」という普遍的なテーマを融合させ、環境との密接な関わりと素材・技法の選択の連関が合致している点で秀逸である。植物以外にも、普段は気に留めることのない部屋の隅を象り、物質的な痕跡とするなど、「不在の記憶」というテーマを通じて、記憶と存在の本質に迫る多層的な解釈を可能にしている。展覧会の冒頭に象徴的に配置された《The Corner》は、建物の隅にアルジネートを詰めて建物の「隅」を型に取り、それにガラスを鋳込んで成形したもので、空き家の部屋の「隅」がガラスの塊に変じて静かに佇む。「隅」はその空間的特徴から、孤立や周縁といった多様な概念の比喩でもあるが、翻って、東京という特異な都市の全体は、こうした埋没しがちなささやかな存在の集積ともいえる。ガラスに封印されて永遠の命を与えられた植物も、都会の「隅」に生きる周縁化された存在だ。今回は佐々木が都心で植物採取を行ったというが、髪の毛やダウンの綿毛が付着しているなど、植物にも人間の痕跡が残っていると感じたという。制作過程でもコンクリートの割れ目から生えた植物は繊維が弱く、水泡が多いために焼成の過程で割れたガラスも多かったようだ。

空間にせよ、植物にせよ、見えない過去の記憶が作品として顕在化するのは、その存在が失われた後であり、永遠に「不在」となった存在を現在に繋ぎ留める行為が作品として残る。「不在の記憶」とは、或る時、或る場所に関わる人々の間で共有される記憶の本質とは何かという問いでもあるのだろう。


<OPENING RECEPTION>
日程:2025年2月14日(金)
時間:18:00~22:00
*22:00以降は通常営業を予定しております。
会場:WALL_alternative ※入場無料・事前申込制
申込URL: https://x.gd/1jF7d
※ウェルカムドリンクを杯数限定でご提供いたします。

 

<TALK SESSION>
出演:佐々木類(アーティスト)、加藤信介(MEET YOUR ART代表)他
日程:2025年2月15日(土)
時間:17:00~18:00
*18:00以降は通常営業を予定しております。
会場:WALL_alternative ※入場無料・事前申込制
申込URL: https://x.gd/JNIL5
※ウェルカムドリンクを杯数限定でご提供いたします。