LUMINESCENCE

ルミネッセンス
発光、蛍光
物質が外部からエネルギーを受けてそのエネルギーを光として放出する発光現象
結晶によって記憶された古代の秘めらた音楽は
植物に身を変え宿り、蓄えられたエネルギーは、やがて発光をともないながら緑のレクイエムを奏でる

01-07. 内なる印象

フェデリコ・モンポウ(1893-1987)
スペインの作曲家。内省的で静謐な旋律と、印象派を思わせる内気で寡黙な和声は、祈りにも似た敬虔さをもっています。1914年にバルセロナで書き上げられた「内なる印象」は、全9曲からなる曲集でシンプルかつ繊細な美学が貫かれていて、時を超越した美しさがあります。

08. シリンクス

クロード・ドビュッシー(1862-1918)
ドビュッシーが1913年に作曲したフルート独奏のための曲。シリンクスと呼ばれるのが一般的ですが、「パンの笛」と心くすぐられる名もあるようです。牧神パーンが妖精シリンクスに恋しますが、シリンクスは逃がれるために川辺の葦(パン)に姿を変えてしまい、牧神パーンは悔やんでそれらの葦で笛を作り吹いた、という神話をもとに作曲されました。フルート独奏の曲としては、最も有名な曲です。

09. ノヴェレッテ 第3番 ホ短調

フランシス・プーランク(1899-1963)
ノヴェレッテ第3番は「2つのノヴェレッテ」(第1番、第2番)が発表された1928年から30年後の1958年に発表されました。ちなみに1958年はブラジルでボサノヴァの「想いあふれて」がリリースされた、ボサノヴァの誕生の年です。プーランクはスペインの作曲家ファリャのバレエ音楽「恋は魔術師」の主題をヒントに作曲しています。短編小説という意味をもつノヴェレッテはシューマンの「8つのノヴェレッテ」で初めて使われました。プーランクのきわめてパリ人的なユーモアと気品を持った曲です。

10. 無伴奏チェロ組曲 第5番 ハ短調 BWV1011 サラバンド

ヨハン・ゼバスティアン・バッハ(1685-1750)
チェロの独奏曲は数多くありますが、やはりバッハの無伴奏チェロ組曲が一番有名でしょう。全6曲からなる無伴奏チェロ組曲、中でも第5番はハ短調で書かれているということもあり、最も荘厳で翳りを帯びた作品となっています。サラバンドは静的で無機質な性格をもっていて、点描的に配置された分散和音はまるでウェーベルンの作品を聴いているかのような印象。和音の重力から一瞬解放されたような錯覚に陥ります。今日ではギター、ピアノ、ヴァイオリンなど様々な楽器で演奏されています。

11. ピアノ五重奏曲 変ホ長調 作品44 第2楽章

ロベルト・シューマン(1810-1856)
ドイツ・ロマン派を代表する作曲家。ピアノ作品が有名ですが、室内楽作品も評価が高く、中でも最高傑作といわれているのがこのピアノ五重奏曲です。特に第2楽章は、ベートーヴェンの交響曲第7番第2楽章の「不滅のアレグレット」、シューベルト「死と乙女」の第2楽章の変奏曲、そしてこの曲を挟み、ブラームスの弦楽六重奏曲第1番第2楽章のヴィオラから始まる変奏曲へとを受け継がれていく、ドイツ音楽特有の陰鬱で絶望的な作風が特徴的で、悲愴のなかに微かにひそむ希望が、これらの楽曲の持つ喜びであり、ドイツ音楽の醍醐味といえるでしょう。

12. メランコリー

フランシス・プーランク(1899-1963)
フランス6人組のひとり。彼が活躍した20世紀初頭の芸術の都パリでは、ロシアの作曲家ストラヴィンスキーやドビュッシーといった天才たちが創り上げた、革新的で前衛かつ異国趣味的な音楽が席巻していました。プーランクら若い6人組は、やがてアートの第一線から少し距離を置き、きわめてフランス的な大衆性をもって、あまり深刻にならずに簡素な表現を手に入れました。まるで60年代後半のフォークムーブメントのように。プーランクのピアノ曲はどれも即興性に富んでいて、自由で若々しい作品だと思います。

13. ピアノ五重奏曲 第1番 ニ短調 Op.89 第2楽章

ガブリエル・フォーレ(1845-1924)
冒頭の静かに上昇する旋律とどこまでも美しく変容していく和声は、フォーレの真骨頂です。抑制されたピアノのアルペジオと清浄な弦の響きは、真に天上の音楽。二つの弦楽四重奏曲と共に、他のフランスの作曲家にはないフォーレが到達した彼岸の美。

14. 夜想曲 第4番 ハ短調

フランシス・プーランク(1899-1963)
プーランクのピアノ小品はどれもユーモアに満ちていて、簡素でメランコリックな旋律と和音はアイロニカルな響きを湛え、フランスのエスプリそのもの。夜想曲のほかに即興曲など沢山の小品を書いています。ピアノ作品はプーランクの音楽を一番よく表しているのではないでしょうか。

15. 亡き王女のためのパヴァーヌ

モーリス・ラヴェル(1875-1937)
近世スペインの舞曲に起源を持つと言われるパヴァーヌは典雅で優美な曲想が特徴。ラヴェルの音楽の師であるフォーレにも「パヴァーヌ」という名曲がありますが、その曲が「亡き王女のためのパヴァーヌ」が生まれるきっかけになったと言われています。また、ラヴェルの母親はスペインのバスク人で、ラヴェルもスペインを題材に「ボレロ」や「スペイン狂詩曲」などといった曲を書いています。20世紀初頭のパリのスペインブームも、ラヴェルの作品がその流行を牽引していたのかもしれません。

16. ヴォカリーズ(チェロとピアノ編)

セルゲイ・ラフマニノフ(1873-1943)
ヴォカリーズとは歌詞を歌うのではなく「アー」や「オー」など母音だけで歌う歌唱法のことです。ラフマニノフのほかに、フォーレやラヴェル、プロコフィエフ、メシアン、バルトークなど沢山の作曲家によって作曲されています。ラフマニノフのヴォカリーズはソプラノ歌手のために作曲されましたが、世界中でいろんな楽器に編曲され愛されています。このコンピに収録したものはチェロとピアノで演奏されています。