moodsteady / 川上つよしと彼のムードメイカーズ
【山口'Gucci'佳宏による全曲解説】
さて、川上つよしと彼のムードメイカーズ、唄ものベスト盤を挟んでの約5年振りとなるニュー・アルバムをここにお届けします。本作は、このバンドを立ち上げた当初のコンセプト、ムード音楽のロック・ステディ化に立ち返りアルバム・タイトルを “moodsteady” とし、ムード音楽の慣例である名曲のカヴァーを中心に、2曲のオリヂナル・ナムバーを織り交ぜ全12曲を収録。皆さん、篤とご堪能下さいませ。さぁ、武田カオリ嬢の妖艶なスキャットから本アルバムの幕開けです。
01. WHAT'S GOING ON (愛のゆくえ)
超大ネタ中の大ネタ、あまりにも大ヒット曲過ぎて、カヴァーするのを躊躇してしまいがちなこのナムバーにムードメイカーズは果敢に挑戦!! ソウル・シンガーの重鎮、マーヴィン・ゲイの1971年、全米ポップス・チャート6位の大ヒットを記録
した言わずと知れた代表曲。元曲のイメージを損なわず、ソウルフルなロック・ステディ・ナムバーとなっています。
今回、この曲に「愛のゆくえ」と言う邦題があることが判明!?
02. MISTY - Vocal - vocal by 中納良恵 [EGO-WRAPPIN']
エゴラッピンよりディーヴァ、中納良恵を迎えたジャズのスタンダード・ナムバー・カヴァー。ジャズ・ピアニスト、エロール・ガーナーが1954年に作曲、元々はインストゥルメンタル・ナムバーでしたが、ジョニー・バークにより歌詞が付けられました。数々の歌手によりカヴァーされている有名曲でもあります。中納良恵女史もライヴで唄っている曲だけあって、唄い上げっぷりは流石。ちなみにジャマイカでは、かの名シンガー、アルトン・エリス氏もカヴァーしていました。
03. COCKTAILS FOR TWO (愛のカクテル)
元曲はアーサー・ジョンストンとサム・コスロウにより作られ、1934年のアメリカ映画「絢爛たる殺人 (Murder at the Vanities)」の挿入曲としてデューク・エリントンの ビッグ・バンドで演奏された名ナムバー。ムードメイカーズは軽快なミッド・テムポのスカ・チューンに仕上げました。
04. YARDBIRD SUITE
トロムボーン奏者、イッチーの選曲によるジャズのスタンダード・ナムバー・カヴァー。ビバップ・スタイル・ジャズの立役者、アルト・サックス奏者、チャーリー・パーカーの1946年代表作。これぞオーセンティック・スカと言える正統派スカ・ナムバーにアレンヂされた一曲。
05. WIVES AND LOVERS (素晴らしき恋人たち)
ムードメイカーズのアルバムでは必ず一曲、偉大な作曲家であるバート・バカラックの名曲カヴァーを、と言うことで今回はこの曲。元々は1964年、同名映画の為に書かれましたが、結局、採用されずに終わった曲です。しかしながら数々のアーティストが取り上げ、特に1965年、ディオンヌ・ワーウィックによるカヴァーが有名。西内徹によるサックスの音色が心地良いロック・ステディ・ナムバーに仕上がっています。
06. VIDEO KILLED THE RADIO STAR (ラジオスターの悲劇) vocal by 大森はじめ
元曲はイギリスの二人組ニューウェーヴ・グループ、バグルスによる1979年全英シングル・チャート1位の大ヒット・チューン。今となっては時代遅れ感のあるラヂオ・スターの悲哀を唄ったナムバーをムードメイカーズはノリノリのスキンヘッド・レゲエ調にアレンヂ。大森はじめの唄声を元曲ヴォーカルのラヂオ・ヴォイスさながらに加工しています。女性コーラスの代りにホーン・セクションが入れる合いの手がポップでナイス?! 異種格闘技的なカヴァーに果敢な挑戦をした、かなり飛び道具的な一曲です。
07. FORESTY AIR
バン・マス、川上つよしによるタイトル通り、森林の雰囲気が醸し出されたオリヂナル曲。妖しげなイントロで始まり、美しいピアノの旋律、荘厳なトロムボーンのサウンド、そして繊細なフルートの音色が絡み合い、淡々と進行する中に心地良さを感じるチューンです。
08. HOW DEEP IS YOUR LOVE (愛はきらめきの中に) vocal by 武田カオリ [TICA]
すっかりムードメイカーズのヴォーカリストとしてお馴染みとなった歌姫、武田カオリをフィーチャーしたイギリスの兄弟三人組ヴォーカル・グループ、ビージーズの1977年大ヒット曲カヴァー。オリヴィア・ニュートン=ジョンとジョン・トラボルタ主演の大ヒット・ムーヴィー「サタデー・ナイト・フィーヴァー」の挿入曲としても有名。清涼感溢れる武田カオリの唄声にピッタリでスウィートなラヴァーズ・ロック・ステディ・ナムバーとなりました。
09. とおい貴方 (Tooi Anata)
いつも精力的に作曲、提案をしてくる鍵盤奏者、ハカセによるオリヂナル・ナムバー。今回も提案されたどれもが秀逸で甲乙付け難い5曲の中からこの曲をチョイス。美メロながら力強いホーン・セクションのサウンドが印象的なロック・ステディ・チューンです。鍵盤ハーモニカの音色もグッド。
10. MISTY - Instrumental -
2曲目の中納良恵女史が唄う “MISTY” のインスト・ヴァージョン。西内徹による味わい深いサックスのサウンドがナイス!! こちらもまた良し。。
11. THE TRACKS OF MY TEARS (涙の足跡)
スモーキー・ロビンソン率いるヴォーカル・グループ、ミラクルズのモータウン・レコーズに於ける1965年のヒット曲カヴァー。この曲でオルガンを弾いているのはハカセではなくエマーソン北村。彼の哀愁をも感じるクールなプレイとメムバーの爽やかなスキャット・コーラスが聴き処です。
12. AMAPOLA
NARGOのトラムペットがリードを取るメロウでムーディなナムバー。元曲はスペイン出身のジョセフ・ラカジェが1924年に作ったスペイン語のクラシック・ポピュラー・チューンです。まさにムードメイカーズが奏でるムードステディな一曲と言えるでしょう。
皆さん、ここにお届けしたムードステディ・ナムバーの数々、ご堪能頂けたでしょうか?! では、御機嫌よう。
平成二十二年十月吉日
ムードメイカーズのプレスマン 山口'Gucci'佳宏 [MFM/RAKSTONE Records]