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私は自身の草原生活実感に基づく経験知と体験的感覚による直感を造形化しています。自分の属する民族の経験や文化、その風土の中から自分自身の精神世界を見つけようとし、モンゴルシャーマニズムにおける「宇宙観」・「自然観」・「霊魂観」・「動物観」を作品に入れ込み、自分と自然、人間と自然との関係に問いかけ、それらを具現化することを追求しています。私の創作の根底には、理性では捉えきれない感性の働きがあり、それは草原という広大な環境の中で培われた「身体で感じる世界」として存在しています。 自作に登場する馬と狼は、古くから遊牧民にとって最も身近な動物であり、それぞれが私自身の自然観や死生観とも深く結びついている存在です。自作における直線的輪郭や平坦な面を用いた馬と狼の形は、草原を吹き抜ける「まっすぐに流れる風やエネルギー」をコンセプトとして形成されたものです。そして、それらの馬や狼を円形に配置するインスタレーション作品は、モンゴルの「オボー祭り」に見られる巡礼的な循環の行為や、自然と宇宙のリズムを象徴するものでもあります。それらによって、エネルギーや生命感を含んだ空間の「動き」や「広がり」を表現しています。 2016年に来日してから異なる文化環境の中で、「自分とは何か」という問いに向き合いながら、草原の記憶と日本での日常との間に生まれる感覚の揺らぎや変化、再構築を受け入れながら、個人の内面と普遍的な感覚が交差する場を彫刻やインスタレーションという形で表現しています。馬やオボーといったモチーフは、単なる民族的象徴ではなく、「自然と人間」「生と死」「身体と精神」を結ぶ感覚的な媒介として扱われます。作品を通して、観る人が自然のエネルギーや存在感を感じ取り、自らと自然の間にある繋がりを再認識する契機となることを目指します。サルチョード・イル_CV