MASH 4th.Album「光とかげ」MASHが自身で振り返る「光とかげ」について、
いくつかの見解的ライナーノーツ。
M-1「白い月」
この歌から今回のアルバムは始まった気がします。
震災前に書いた歌。
しかし少し二番の歌詞が震災を予見するような歌詞になってしまいました。
収録することにも一瞬戸惑いすら感じました。
しかし「白い月」の、根本的テーマは自分の考える幸せの価値観と
精一杯向き合ってみるという物でした。
だから時系列に物語を進めるためにも一曲目にしました。
そして、どうやら萩原朔太郎さんの詩にも、「白い月」という歌があるみたいです。
前作「若者」のラストで書いた「月に吠える」という歌でも、
たまたま萩原朔太郎さんの詩のタイトルと被りました。
そして偶然にも今回は一曲目がまた「白い月」。
物語は続いていたようです。
そして、この新しいアルバムという一枚を通して歌の中で日常を生きる
主人公の僕は最後、何処にたどり着くのだろうか?
リスナーの皆にも同じ気持ちで一緒に物語を歩きだすように、
一曲目から聴いてもらえると嬉しいです。
M-2「列車」
サウンドはギター、ベース、ドラムのみにしました。
最後、展開していくところはクラプトンのレイラという歌をほんの少しだけイメージしました。
聴いた人が聴き終わったら別の場所にたどり着くようなアレンジを意識しました。
(列車というタイトルだからこそ!?)
未来へ足を運んでいくことは、日々感じる疑問や違和感に対する人生の答え合わせ。
そんなことをこの歌の制作期間中考えていた気がします。
M-3「憂鬱が燃える」
シンプルなヒップホップのビートで、ほぼワンループで最後まで展開していく歌です。
情熱で憂鬱を燃やすという表現は、夕暮れの燃えるような夏の空を見ていたら浮かびました。
アンダーグラウンドのヒップホップ好きな人にもきっと届くワンループのビートだと思います。
20代半ばくらいで現実にもがき苦しみながらも生きる若者に是非聴いて欲しいです。
M-4「カレーライス」
これは僕がカレーライスが好きということもあり、間違いなくラブソングです。
カレーライスは一時期、週に五回くらい食べてた。でもなぜかこの歌を書いてから少し減ってるんだよなぁ、と思いながら今朝も食べたんだけど。
サウンドは、友達のピアノマン吉田と話し合いながらピアノのループをメインで作りました。
ゴスペルのコード感を意識して作りました。
最初ビートをもらった時からスカーフェイスのオンマイブロックみたいで僕のB-Boyアンテナにビビっと来たんですよね。
M-5「ひとりひとつずつ」
ベンハーパーとかジャックジョンソン、Gラブとかを意識して書きました。
「雰囲気で聴かせよう」をテーマに。
歌も歌い直しなしの一発勝負。珍しく声も張り上げず歌いました。
そして、隠れたテーマは「節電」。震災が起きたあとで夏に録音が決まっていて、無駄な電力なしで、シンプルに聴かせよう、とまずトラックメーカーと話し合いました。
アンプラグドを意識しつつアコースティックに書き出しました。
内容は普遍的な人生について歌ってます。
Liveでは皆で手拍子しながら歌いたいです。
M-6「太陽とカーテン」
まずトラックメーカーにピアノをワンループに繰り返しをもらい、
歌詞とメロディーをつけていきました。
なんか歌詞が降ってくるって感覚はめったにないけど、この曲は降ってきました。
だからなかなか説明できないんですが、
震災がなければきっと浮かばなかったことだけは確かです。
でも自分が今考える普遍的な、未来への定義、みたいなものはここで書けた気もします。
敢えてアルバムの折り返し地点に朝の歌を置いた。(要は昔でいうアナログのB面の一曲目。)
雰囲気はCOLDPLAYのパラシューツやRADIOHEADのパブロハニーのような、THE BEATLES以降のロックンロールの影響下にあるサウンドの要素が出てればいいなぁ。
ミックスダウンの作業で感覚的に違和感を作る作業は実に面白い体験でした。
朝、学校や会社に行く前に聴いてほしい歌です。
そしてこの歌詞の一部をポスターにしました。
文字だけでも読んでほしい歌ができました。
M-7「詩人のリング」
僕の詩への愛と、ラップへの向き合い方をシンプルに書きました。
僕は今もラップを以前と変わらず愛してるってことです。
トラックがワンループのアンビエント、且つスモーキー。
書いてた時期にJames Blakeをよく聴いていた影響があるのかもしれないです。
根っからの音楽好きやロックンロール、そして普段ヒップホップを聴かないような人にも一度聴いて欲しい。
絶対に伝わるもん。
M-8「独裁者」
自然と浮かんだ歌です。
どこの国の人とか特定はできないです。
この歌を聴いて、この歌の世界の主人公からただ単に悲しいと感じるか、
もしくは希望みたいなモノを感じるかはその人の生きて見てきたモノで変わると思います。
ラップは実は韻や言葉遊びやリズムがすべてではなく、物語だったり感情だったりも重要です。
そしてこの歌の中には今も何人もの命が生きているはずです。
M-9「many moons」
毎日仕事頑張っている大人に是非聴いて欲しいです。
サウンドはダブっぽく、とてもシンプル
しかしシンプルってのは単に音が少なければ良いというわけではないことにも気がつきました。
ようは纏まってなければ、いくら楽器が少なくてもシンプルとは呼べないってことに。
M-10「この街のすべて」
最後の歌!
石巻市に行った次の日から書き出した歌です。
いまある眼を凝らさないと見えないような小さい幸せを忘れないうちに描いておきたかったんです。
子供らとの合唱のレコーディングは最高に感動しました。
子供達の中に未来を見たし、自分の中にいるはずの面影を見た。
サウンドは岡本さんと締め切りが迫る短い時間の中で話し合い決めた。
声の処理はJOHN LENNONやOASISのリアムが好きそうなエフェクトをかけてもらった。
直接的に悲劇を歌わなくてもこの歌の裏にある本当のメッセージを感じてもらえれば嬉しいです。
聴いたあとに、大切な人や、懐かしいあの人の声が聞きたくなり、
久しぶりに電話でもしてみようかなぁ、とか、そんな気持ちになってもらえらたら嬉しいです。
後書きのあとがき
そして前作「若者」から意識せずにも続いていた物語。
僕はこの「光とかげ」を描き出した当初、ファンタジーを描きたいと周りの仲間やミュージシャンに公言していました。
しかしいま思えば、描き出したかったのはファンタジーというよりは、幻想のほうに近い「普遍的なのに今までなかった物語」、つまり「日常から少しだけジャンプする場所」を書きたかったのです。
「光とかげ」も、ふと迷った時に手にする一冊の本のように、ハッピーエンドの映画のように、誰かの暗闇を動き続ける光になってくれれば最高です。
出来ればダウンロードだけではなく、CDを手にとってジャケットの歌詞、アートワークと共に楽しんで欲しいです。
そして最後まで読んでくれてありがとうございました!
後は、音楽を聴くだけです!
よろしくお願いします。
そして買って聴いてくれた人、本当にありがとう!
発売に寄せて。11月2日。
地球、ニッポン、ナゴヤから。
情熱のばか、MASH