世界のポップスと共通する声の人が歌う童謡っていうのがすごく大事(☆Taku)

――今回のプロジェクトが始動した経緯から教えてください。
☆Taku Takahashi(以下T)「以前m-floのA&Rをやっていた方から『童謡をやりたいんだけど、どう思う?』っていう電話がかかってきて。『LISAとやったら面白いと思うんだけど』って言うから『すげー面白いね!』って言って」
LISA(以下L)「私もまったく同じ経由で話が来て、『☆Takuも参加する』って言われて『面白そう!』って思って。このタイミングでまた☆Takuとやれるっていうのも嬉しかったし、なんだろうこの縁は?って感慨深かったです」

――お2人でやるのも相当久しぶりですよね。
「そうですね。『HEY!HEY!HEY!』の特番に3人で出たのが最後ですね(2012年9月)」

――☆Takuさんに「面白い!」と思わせるLISAさんの魅力とはどんなところなんでしょう?
T「彼女は歌の表現力がすごく高いアーティストで、そんな人が童謡を歌うっていうのがまず面白いし、あとこれってすごく大事なことなんですけど、小さい頃に聴く歌ってうまい方がいいんですよ。今、世に出ている童謡を歌ってる人が下手っていうわけじゃなくて、ちゃんと世界のポップスと共通する声の人が歌う童謡っていうのがすごく大事なんですね。だからLISAがやることはすごく意味があると思う。そういう意味でも面白いなと思ったんです」
L「私もサウンド面では安心しきってる。絶対変なことはしないし、LISAのいいところはここだっていうのも彼は全部わかっているので。アルバム作りって、歌ってからの作業は見えないところでやってもらうことが多いので、本当に信頼してないとできないんですよ。けど中学の頃からずっと一緒にやってるので、I trust him. そしてまさにおもちゃ箱みたいに色んなものが次々と出てくるんですね。楽曲を一つ一つプレゼントみたいにしてくれて、後から聴いて『いいじゃん、いいじゃん。よくなってる、よくなってる』って」
T「昔からLISAは僕がやるものに対して応援してくれたり、よくなるかわからないものも絶対よくなるよって勇気づけてくれたり。音楽をやっていく中で常に自信を持たせてくれて勇気を与えてくれて、それでも僕もすごく成長できたので、そうやって改めて言われると嬉しいですね」
L「今ここでこうやって一緒に出来ることが本当に嬉しいよね」
T「縁だよねって話をこの対談が始まる前もしてたんですよ。いつもここでっていう時にこうやって一緒にやれてるんです」
L「節目節目で☆Takuが絶対いるんだよね」
T「音楽って才能がある程度なきゃできないことだし、プロでやっていく上で才能はもちろん重要だけど、それでも続けるのってすごく大変なことで。実際僕と同じタイミングでデビューした人でもう音楽をやってない人もいっぱいいるし。そんな中、こうやって好きな音楽をやれるのってすごくありがたいことだと思うんですよね。そのうえ、気心知れた仲間とやれるのってすごい素敵なことだと思うんです」

遠くにいても☆Takuのやりたいことはわかってましたから(LISA)

――☆Takuさんはお子さんがいらっしゃるということで、今回のプロジェクトは尚更やりがいがあったのでは?
T「そうですね。出来上がるたびに息子には聴かせたんですけど、反応していたからいいんじゃないかなと。息子がすべてと判断するのも危険なんですけど、けどまず子どもが反応しなきゃっていうのはあったので」
L「リアルだよね。本当にお父さんだしね」

――サウンド・プロデュースは☆TakuさんのレーベルTachytelic所属のMitsunori Ikedaさんが担当されています。
T「僕のレーベルにしているからとか関係なく、彼は自信を持って勧められるクリエイター。僕はプロデューサー的な立場で、この曲はこういうアレンジにしたらどう?とか、この方がLISAは歌いやすいんじゃないかとか、Mitsuとディスカッションしながら作っていきました。(LISAに向かって)歌いづらいとかなかったですか?」
L「本当にスムースでした。遠くにいても☆Takuのやりたいことはわかってましたから」

――レコーディングには立ち会わなかったのですか?
T「立ち合いませんでしたね」
L「まったく来なかったよねー。けどそれも私のことを信じてくれてるから来ないんだろうなと思ってました。☆Takuが来ても世間話ばっかりして仕事にならないし(笑)」
T「歌のディレクションしてても、どれもいいじゃんって思っちゃうんですよ。逆にLISAの方がこれはダメだって言ったり」
L「きっとこう思ってるだろうなっていうのがテレパシーのようにわかるので。けどちょっと寂しかったけどね(笑)」
T「カステラの一つでも持っていけばよかったね(笑)」

子供達もいいものをたくさん吸収して大人になってほしい。世界と繋がれるものを知ってもらいたいです(☆Taku)

――どんな全体像を描いて制作に臨みましたか?
T「『子供達が歌って踊れて、なおかつ子供達だけじゃなくて親も楽しめる』っていうコンセプトが元々あったので、そのことを念頭に作っていきました。オリジナル曲と比べてガラリと変わっているものあるし、近いものもあるかもしれないけれど、僕自身はオリジナルをまったく意識せずに作りましたね。誕生して100年以上経ってる曲もあるかもしれないし、国内外合わせてすでに色んなアレンジのものがあるけれど、そこは意識せず。もしかしたら同じようなアレンジの曲もあるかもしれないけれど、LISAが歌っているっていう時点で違うものだと思うし。だからこのプロジェクトではLISAが歌うとどうなるかっていうことが一番大事だったんじゃないかな。LISAの声が活きるものじゃないと意味がないんで。LISAに聞きたかったことがあって、例えば『幸せなら手をたたこう』とか、オリジナルの童謡とは全然違うグルーヴじゃない。それで歌う時に難しいとかなかったの?」
L「ううん。楽しくてレコーディングが終わるのが寂しかったくらい。来たトラックは全部何の違和感もなかったし。これはちょっと私っぽくないから変えてくださいなんてこともないし。ちょっとラテン・ヴァイブスなものもOh my god! 超私じゃん!って思いながら歌ってましたね」
T「ラテン・ヴァイブスはリサの血に流れてるからね」
L「ですね。ハードルが高ければ高いほどエンジョイできました」
T「童謡ってメロがシンプルじゃん。誰でも歌えるように。そういうところは難しくなかった?」
L「あまり追及すると逆にわからなくなっちゃうから素直に歌いました。最初、色んな人のヴァージョンを聴き始めた自分がいたんだけど、それを始めると自分がわからなくなっちゃうからやめて。子供の頃から聴いていて頭に入ってるから、☆Takuのトラックだけをひたすら聴いて、そこで私の声はこのトラックに絶対合う、間違いないって思って、自信を持ってレコーディングに臨みました。ゲリラ・レコーディングでしたね(笑)」

――新曲に臨む感じだったんですね。
L「その通りです。」
T「俺、ビビって色々聴いちゃう方」

――今回も聴きました?
T「ちょっと研究しました。チェックしたのはアメリカの子ども番組。ぶっとんでる企画が向こうの子ども番組って多いんですよ。それがカッコよくて、大人が見ても楽しめる内容で。そりゃあ将来のビヨンセとか生まれるわなと思ったし、子供の頃からこういうものを見るのってすごく大事だなって改めて感じました。だからこのプロジェクトもどんどんシリーズ化してもらって、子供達もいいものをたくさん吸収して大人になってほしい。世界と繋がれるものを知ってもらいたいです」

スピリットはエンジョイ&ハッピーが伝わればいいなと(LISA)

――LISAさんは童謡ということで歌い方を変えたりしたのですか?
L「わりとまんまでいきました。私をリクエストしてくれたってことは、私のままでいいってことだと思うので。じゃないと私が歌う意味がないと思うので。☆Takuも私に新しいことをやってほしいんじゃなくて、LISAのままでいいんだよっていう人なので。スピリットはエンジョイ&ハッピーが伝わればいいなと思ってましたね。」
T「けど優しい声してるよね」
L「優しい気持ちで歌ってるから、それがフィルターを通って伝わってるのかな」

――一番印象に残ってる曲はどれですか?
T「一番チャレンジだったのは『うみ』。ワルツのリズムで、そのリズムでクラブ・テイストの曲ってないから、それをどうするかが一番難しかったです。そのチャレンジに対する僕なりの回答はこうなりましたけど、これが正解かどうかは聴いてもらって判断してもらえればと思います」
L「私は全部エンジョイさせていただいたので全部なんですけど、やっぱり『おもちゃのチャチャチャ』は私のルーツのリズムなので、特に印象に残ってますね。本当に素直にエンジョイできたし、ちょっと踊りながら歌ったくらい」

――LISAさんの今後の予定は?
L「私はこのアルバム・プロジェクトです!私自身すっかりこのアルバムのファンです!これを持ってライヴして広げていきたいなと思ってます」
T「その合間を縫って僕とも仕事をしてもらえれば(笑)」

――最後に、リスナーへのメッセージをお願いします。
T「子供達に本物の音楽と接してもらいたいっていう思いももちろんあるけど、それだけじゃなくて、親となっている人達が音楽とコンタクトできる機会を持つことがすごく大事だと思うんですね。それは自分に子どもが出来てはじめて気付いたことなんですけど、実際子育てがどんだけ大変かと。旦那も子供みたいなものなのに、子供を24時間フル・サポートしなきゃいけなくて、そんな状況で友達とメシ行くってことさえなかなかできないですよね。特にこのアルバムを聴く世代の親はそうだと思うんです。うちの妻もライヴ行きたいとか音楽と接する機会が欲しいっていってるけど、なかなか難しいのが現状で。けど親達が音楽を楽しむ権利がないのかって言ったら全然あるし、なので今作を子どもと一緒に楽しんでもらえたらなと。子供に合わせるだけじゃなくて、親も好きだったポップスの感覚を同時に味わいながら聴いてほしいですね」
L「ママ&キッズ、パパさん、おじいちゃん、おばあちゃんも、皆さん、私とフィーバーしにライヴに来てください!」
T「キッズ・ディスコもやりたいと思っていて。幼稚園とかで」
L「可愛い!超いい!ファンタスティック!」
T「そこでLISAにも歌ってもらいたいんだけど」
L「あはは!いいね!」