「僕の彼女を紹介します」オリジナル・サウンドトラック 2004.12.8 RELEASE!

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チョン・ジヒョン演じるヨ・ギョンジンのためにこの世界から素敵な音楽を集めた……。そんなふうに言いたいほど、この作品には多彩な音楽が詰まっている。前作『猟奇的な彼女』に比べ、この作品ではジヒョンより女性的な感性が描かれる。もちろん、あの元気と奔放と思い込みの激しさは健在なのだが……。そんな奥行きの深くなったキャラクターにあわせるように、この作品からは、様々なタイプの音楽が聞こえてくるのである。

 

その多彩さの中でも最も注目すべき音といえば、やはり、X JAPANが1989年に発表した楽曲「Tears」だろう。今年6月に韓国で公開されたときは、日本のメディアでも「韓国映画で初めて使われた日本語の楽曲」と大きく報道された。クァク監督自らが大変なファンだけに、X JAPANの曲をこの映画で使用するにあたり1年前から交渉をはじめ、今年1月1日に韓国で実施された第四次文化解放も後押しとなり、実現したという。使われるシーンは、この映画のクライマックスである。「Tears」、シングルとしては93年11月にリリース。そして96年のアルバム「DAHLIA」に収録された。初登場1位。韓国ではいまだ大変な人気を誇るX JAPANの曲が使われたということは、韓国でも大きなニュースになった。

 

この作品冒頭、え?と驚く場面でまず聞こえるのは、ボブ・ディランの「天国への扉(原題:Knockin'on Heaven's Door」である。ご存知アメリカのシンガー・ソングライターの1973年6月にリリースされたアルバム「PAT GARRETT ANDBILLY THE KID」に収録された、ボブ・ディランの代表曲である。その曲をカヴァーしているのが、韓国のシンガー、Youme(ユミ)だ。ユミは、2002年に、ジヒョンとともに『猟奇的な彼女』に主演したチャ・テヒョンの妹分として鳴り物入りでデビューしたシンガーである。ちなみに本作のサウンドトラック盤は2枚組になっており、そのうち1枚が、ユミのアルバム。そこには1曲のインストを含め5曲が収録されている。

 

本作にはそのほかにも印象的な音が聞こえてくる。たとえば、ギョンジンの過去が描かれる場面、彼女が白鍵だけのピアノで弾く曲は、エリック・サティのものだ。1888年に作曲された「ジムノペディ第一番」。サティは1866年生まれ。ロマン派といわれているこの時代にすでに印象的な音楽を作っていたイノヴェイター。この映画では、この「ジムノペディ」のほかにコミカルなマーチ「ラ・ピカデリー」(1904年作)も使われている。

 

また印象的なのがアメリカのオールディーズ。これは「STAY」という曲。映画『ダーティ・ダンシング』('87)でも使用されているが、オリジナルは、モーリス・ウィリアムス&ザ・ゾディアックスの1960年の全米ナンバー・ワン・ヒットだ。ギョンジンが警察にミョンウを無理やり引っ張っていって、あれ誤認逮捕??となる楽しいシーンに流れる曲がこれである。 映画の中で、唯一といっていい、韓国語の曲が聞こえてくるのは、後半、ギョンジンが心の傷を内に秘め、警察の業務に邁進する場面。強い印象のヒップホップの曲が聞こえてくる。それが、韓国のヒップホップ・アーティスト、日本でもアルバムがリリースされているMCスナイパーだ。1978年生まれ。外国育ちのヒップホップ・アーティストも多い韓国で、叙情的・民族的要素が強く、現代の韓国社会の影・若者の心を描いたライムなど、韓国的であることにこだわる頑固なアーティストだ。日本では坂本龍一のアルバム「CHASM」にフィーチャーされていた韓国人ラッパーとしてご記憶のかたも多いかと思う。ここで使用されている曲「BK Love」は、MCスナイパーのファースト・アルバム「ソー・スナイパー…」(02年5月リリース)に収録されている。日本盤も出ているので是非その詞を堪能していただきたい。まさにこの映画のために書かれたように哀しさに満ちている。

 

そして、忘れてはいけない。エンド・ロールで流れてくる印象的な曲「風でもいいの」は、先に出てきたユミの歌だ。韓国のバラードらしい心に響くヴォーカルで、クァク・ジェヨン監督が自ら作詞・作曲を手がけたこの曲は、この映画の結末とともに涙を誘う。そのほかにも、カヤグムなど韓国伝統楽器を使ってインスト・ヴァージョンを作ったりと、どの音楽をとっても手の込んだものになっている。まさに音楽はこの映画作品の大きな魅力のひとつだ。