※この文章は「A BALLADS」購入者特典サイト(2003年3月〜2003年5月)にて掲載されたものです。

001.「RAINBOW


アルバム『RAINBOW』スペシャルサイトによるメッセージは10万件を越え、想像を絶する反応にスタッフも驚いていた。
しかしよくこの短い時間の中でまとめたなと思うほどに、本人は素晴らしい詞を完成させた。サウンドの方は、サイトによって発信したメロディーのイメージを残しつつCMJK氏によってアレンジが進められたが、ある日浜崎本人から、一曲として成立するには要素が少ないという指摘があり、急遽長尾大氏とCREAとの楽曲再構築が始まった。アレンジもその変更によって、もっと暖かくて後半に向けてどんどん盛り上がっていくような感じというものに方向性を修正。ちなみにクレジットにもあるD・A・I chorus familyとは、長尾大氏が新しいメロディーのデモを作っている時に、自宅に集まっていた彼の仲間たちが歌ってみた後半の大人数コーラス隊のこと。このデモのテイクが非常に臨場感があり、オリジナルにもそのままを使用することにした。
そういった沢山の人々の気持ちが一つになったこの曲は、今回のバラードベストの入口を担う最高にドラマチックな仕上がりになっている。

From ayu
 今まで直接みんなの声を聴いてそれを詞にするのはやった事がなかったから、「RAINBOW」でそれをやってみようと思ったのがきっかけ。
嬉しい事に10万通!も届いてね。最初は“どうやってつくっていこうか?”ってかなり迷ったけど…(苦笑)。届けられた声(詞やテーマ)はちゃんと全部聴きたい(見たい)と思ったし、中にはスゴク悲しいテーマや逆にハッピーな内容、色をイメージした書いた作品とか、10万人いれば10万通り感じる事がある訳で…。で、言葉を断片的に繋いでいくのは、職業作家の人の方がきっと上手に出来るし、ayuじゃないと思ったんだよね。だから10万分の1=どれかに主観をおいて書くんじゃなくて、全てに目を通して、全体を見たayuが感じたコト、イメージを詞にしたんだよね。


002.appears "HΛL'S Progress"


本人による、何か手を加えたいというアイディアに対して、もともとのアレンジを手掛けたHΛLに、2003年の現在というテーマで生まれる新しいヴァージョンを聴かせて欲しいというオーダーのなか、もう一度手掛けてもらい仕上がったもの。
オリジナルシングルバージョンの中にある、この楽曲の印象を決定づけた音色たちのニュアンスを保ちつつ、HΛLサウンドの今の新しさを投じて、とてもよい結果を得ることができた。サブタイトルの“HΛL‘S Progress”とは「HΛLサウンドアプローチの進化型」を意味している。

From ayu
 歌う前に、歌詞を確認しなくて済むぐらい頭に入っている作品(笑)。
今までのayuの作品には、“私”や“あなた”、“君”といった主人公が登場して、彼らの揺れ動く気持ちや今こう思ってます、といった“心の内側”を歌うことが多かったんだけど、この「appears」では初めて“恋人達”っていう言葉が出てくる。一見幸せそうに見える恋人達が過ごす、ごく当たり前の日常。それを遠くから第三者的に見ている感じ。あと、“キス”って言葉を使ったのも初めて。プロモーション・ビデオの撮影で歌った時はスゴク照れたね(笑)。
(from beat freak 142号 2000年11月末発行)


003.Key 〜eternal tie ver.〜


3rdアルバム『Duty』に収録された知られざる名曲。当時本人は「結婚式とかの祝福を称えるような曲を作りたい」という中から生まれたもの。〜eternal tie ver.〜というサブタイトルからもそのような様子がうかがえる。
是非この曲の詞を詠み上げてほしい。3枚目のアルバムにして、この完成度には感動した思い出がある。一度はリテイクの案が浮上したが、当時にしか生むことのできなかったこのテイク自体を大切にし、リマスタリングのみにとどめ、収録した。


004.YOU "northern breeze"


当初この曲は音色的なバランスをトラックダウンによって再構築して、元々のテイクを生かすという考えでまとまっており、再トラックダウンヴァージョンを完成させていたのだが、突然本人からもう一度リメイクしたいとの案が持ち上がり、早急に作り上げたもの。
原曲のイメージはそんなに変えずに今の浜崎あゆみを感じさせたいという問いかけに対し、tasukuによるアレンジは今の時代性を無理矢理表現するようなガツガツしたものではなく、たとえば、北欧のそよ風〜northern breeze〜のようにとてもさわやかで自然で、普遍的な作りに仕上がった。そのサウンド中に今の浜崎のうたごえが融合し、独特の雰囲気をかも出している。


005.TO BE "2003 ReBirth Mix"


今回のバラード集に向けて、曲によって様々な角度からのリメイク(歌い直し、元々のアレンジからの変更、企画的にサウンドを作り直したもの)が存在するが、この曲は、後の 「SEASONS」とともにトラックダウンのみをリトライした。この方法は、予想に反し実は非常に効果が現れるものになった。
楽曲のトラックもヴォーカルもそのままにしていながら、ここ最近の作品で確立している浜崎あゆみサウンドに質感を近づけることによって2003年に生まれるバラード集に収録するにふさわしい出で立ちに仕上がった。
ちなみにシングル時のミックスを手掛け、そして今回もトライしてくれたエンジニア森元浩二氏はこの作業自体を非常に楽しんでくれた。


006.HANABI


シングル作品としても、ライブステージで聴くパフォーマンスも、浜崎あゆみファンの中では記憶に新しい名曲。
人気投票の中では、はずれることはないであろうと思っていたがやはりこのように収録されるものになった。今振り返ってみてもこの曲が収録された2002年のマキシシングル「H」というのは、名実共に強力なアイテムだったことを痛感する。
レコーディング時のエピソードとしては、イントロから出てくるオルゴールの音は、なつかしくそして儚い印象を演出するために小さなヘッドホンからこの音をだして、さらにそれをマイクで拾って録ったもの。


007. "HΛL'S Progress"


前述の「appears」と同じようにHΛLによるアレンジによって生まれ変わりをねらったもの。appearsに比べて新しい要素の方がより強く打ち出されているように感じる。
初の作曲CREAによるシングル曲にして、大ヒット作品であることから、なおさらこのニューヴァージョンが一層引き立っているように感じる。HΛLからのデモヴァージョン(とはいってもHΛLはいつもこの時点で95%までは仕上がっているのだが)を本人と共にスタジオでアレンジ確認のため聴いたときに、今回のアレンジから付加されたイントロ部分のあまりの壮大さに?クスッと笑ってしまった本人の様子を思い出す。


008.Dearest


CREA+DAIという作曲の方法論を生み出された曲。この方法論がまたひとつ浜崎あゆみワールドを進展させるポイントとなった。
シングルのカップリングにはアコースティックピアノ・ヴァージョンも収録されており、当時のプロモーション時期に、テレビ出演の際はあえて島健氏の生ピアノと歌のみでこのヴァージョンも披露していた。本人とこのバラード集にはどちらのヴァージョンを収録するのがいいのか、なかなか決まらずにいたが、収録される他の楽曲たちが、様々な形に姿を変えていくのを見て、やはり今回はオリジナルヴァージョンにすることでまとまった。
のびのびと歌い上げるヴォーカルとこのサウンドによって、2001年日本を代表する名曲として確固たる位置づけを獲得した。


009.Dolls


アルバム『RAINBOW』に収録されている楽曲の中でも浜崎あゆみ持ち前の「決して暗くないメロディーを、切なく歌い上げる」ミディアム曲として定評のあるもの。予想通り人気投票の上位につきささっている。
この曲に限らずCREA曲というのは、原曲からアレンジが施され、本人の詞が生まれ、それがメロディーに乗ることで魂が込められ、完成していくプロセスは、本当に魔法のように楽曲としてのパワーを昇華させていく。


010.SEASONS "2003 ReBirth Mix"


2000年シングル「vogue」「Far away」とともに3部作と称され、大ヒットを生んだ作品である。前述の「TO BE」と同じように、これはトラックダウンのみを施して生まれ変わったテイク。
この楽曲もある意味、日本の音楽シーンにとても浸透してきた曲だけに、オリジナルよりも若干リズムセクションが前面に押し出され、さらにギターの音色をよりくっきりと整理し直されたこのヴァージョンは、おそらくリスナーの皆にも明らかに新鮮に感じるものになるであろう。


011.Voyage


名実共に2002年の代表曲ともいえる名作。
浜崎あゆみが生み出す、ポップスにおけるバラード曲としての普遍性と、音楽シーンに対して今を反映した時代性という、ある種相対するようなイメージを一つにすることを非常にうまく表現されている。
アルバム『RAINBOW』の収録曲「Close to you」のアレンジを手掛けてくれた音楽プロデューサー亀田誠治氏は、某業界紙の紙面で「2001年のベスト1の曲」と評していた。


012.A Song for ×× “030213 Session take #2”


このバラード集企画が生まれたとき、早い段階でリメイクのイメージを形にしていたもの。ファーストアルバム『A Song for ××』に収録したオリジナルバージョンは、アルバムタイトル曲として強いメッセージを表現していつつも、サウンドはプリミティブなポップチューンとして存在していた。しかしながら現在までの度重なるライブパフォーマンスの中でこの曲は、浜崎本人による心の叫びのようなヴォーカルスタイルとともに完璧にロックテイストをアピールする楽曲として姿を変えていった。
今回のセッションではさらに、ライブツアーバンドメンバーとのセッションにより、ライブステージさながらの緊張感あふれる一発録りレコーディングバージョンとして完成した。もうおわかりかと思うがサブタイトルの“030213 Session #2”は文字通り2月13日のレコーディング、テイク2である。いつものメンバーとともに和やかな雰囲気で始まったところが、いざレコーディングとなるとピンと張りつめている雰囲気がひしひしと伝わってくるヴァージョンである。


013.Who... “Across the Universe”


そして人気投票にて1位を獲得したのがこの曲。浜崎あゆみをずっと応援してくれているリスナーにとっては、やはりシメといったらこれになるというわけだ。
この曲もやはり今の浜崎あゆみを吹き込んだもので伝えたいと考え作業を進めた。新しく生まれ変わりを担ったCMJK氏によるアレンジは、最初はもっと打ち込み色が強く硬質な印象だったのに対し、本人のイメージはオリジナルバージョンよりもさらに温かい感じのするものにしたいという言葉により、アレンジをもう一度最初から組み立てて、このように壮大かつドラマチックな内容に仕上がった。
イントロの繊細な生アコースティックピアノから、後半の重厚なコーラスで盛り上がっていく展開が、このバラード集企画の本編最後の曲という意味合いをさらに盛り上げている。


014.卒業写真


ずっと前から、過去の名曲たちをカヴァーするといったアイディアはあったものの、特に実現にまで至るきっかけがなく見送りになっていたが、このバラード集という絶妙なタイミングに、あらためての提案と本人の気持ちが合致して完成したもの。
サウンドメイキングに関しては、あえて浜崎と同世代のtasukuを起用し、懐かしさとかオリジナルの持つニュアンスにそれほどとらわれずに、どちらかというと浜崎世代が解釈するこの曲のイメージを生かせるようなものにしようと心がけた。本人のヴォーカルアプローチも浜崎あゆみらしく自分自身のものとして十分に取り入れて歌えている。
ひとつだけこだわりを加えた点としては、おそらくこの楽曲が生まれた頃を同じにして使用されていたであろうFender Rhodes Sutecase Mk I という60~70年代のエレクトリックピアノを大々的にフィーチャーし、当時のサウンドとの接点を演出した。



記事の無断転載を禁じます。