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2014/11/15

小室哲哉書き下ろしSTORY BOOK「CAROLの意味」が音楽付き書籍として発売決定

MAGAZINE
TM NETWORKが1988年に発表し、CD・コンサート・小説・アニメなどをメディアミックスしたあの物語「CAROL」の真実を小室哲哉がついに解禁。

2013年頃、小室は頭の中にあったCAROLの真実を解禁しようと決め、ロンドンなど3カ国を取材。封印してきた真実を核にしながらも、さらに新たな要素を練り込こみ、ストーリーブック「CAROLの意味」をついに完成!さらに小室ならではのアプローチとして、この「CAROLの意味」の世界感を50分を超える「password」という楽曲で表現。付属のミュージックカードからダウンロード出来る。








<STORY BOOK「CAROLの意味」数量限定生産MUSIC CARD付き版>
【発売日】2014年11月15日発売
【著者】小室哲哉
【価格】3,000円(税込み)
【本の判型】A5版 約230ページ
【MUSIC CARD】小室哲哉による50分を超えるサウンド・トラックがダウンロードできるPINコード付き
【発売・発行】(株)KADOKAWA
【企画・編集】エンターブレイン

<STORY BOOK「CAROLの意味」通常版>
【発売日】2014年11月15日発売
【著者】小室哲哉
【価格】1,800円(税込み)
【本の判型】A5版 約230ページ
【発売・発行】(株)KADOKAWA
【企画・編集】エンターブレイン
http://www.cddata-mag.com/article/info/2014/10/10/12


 1988年。ロンドン。TM NETWORKは『CAROL』の制作に着手した。
 それは80年代としては、大規模な、しかも斬新なプロジェクトだった。しかし、そもそもの発端は、プロデューサー兼リーダーである小室哲哉の一瞬のひらめきである。小室は、その一瞬を頭のなかで反芻し大きな物語に育て上げた。しかし、あまりにも膨らみ、あまりにもサイバーになったため、いくつかのシークエンスを封印せざるを得なくなってしまう。具体的には、ファンタジーへの軌道修正だ。誤解を怖れず書くなら、当時の小室は、物語の完成よりプロジェクトの推進にプライオリティを与えた、と言っても過言ではない。

 では、そうまでして推進したプロジェクトとは、いかなるものだったのか。その本質はメディア・ミックスだ。「読んでから見るか、見てから読むか」、この有名なキャッチコピーに象徴される当時のメディア・ミックスは、小説と映画が主導していた。しかし、音楽家・小室哲哉は、音楽の存在、音楽の力を信じ、音楽主導のそれを企画した。CD、コンサート、ノベル、コミック、ビデオ、ラジオドラマ、写真集、マンガ、イベントなどを連動させようと試みた。事実、CAROLはさまざまなメディアにトランスポーズされた。
ところが、時は四半世紀以上前。1つのコンテンツをさまざまなメディアが共有することを時代はしっかり理解できなかった。どれほど新しく、どれほど大きな可能性の扉を開けたか、正当に評価されたとは言い難い。しかし、現在では、CAROL方式のメディア・ミックスはすっかり正攻法になっている。1つの原作がアニメ、ミュージカル、ラジオ、ゲーム、キャラソン、コンサート、グッズと拡散する『テニスの王子様』や『銀河英雄伝説』を例に挙げるまでもないだろう。今やっと、時代はあの頃の小室哲哉の真意(いわばCAROLの意味)を理解できるようになったのかもしれない。

 小室は、できる限り削ぎ落とし、凝縮した物語をメンバーである木根尚登に伝えた。その時のやりとりを記録した資料は現存してないが、それを軸にアルバム制作と小説制作が同時進行したのは事実である。なぜなら、木根尚登はいくつかの著書のなかで、ロンドンでのレコーディング中に物語を執筆していた、と書いているからだ。
 完成したアルバム『CAROL』は、TM NETWORK唯一のミリオンセラーとなった。一方の小説『CAROL』も40万部超のベストセラー。日本武道館連続7公演を含む全国ツアーも大成功した。

その物語とは──

 舞台は1991年。
 キャロル・ミュー・ダグラスは17歳。
 その日、彼女は、お気に入りのバンド「ガボール・スクリーン」の最新アルバムを買うため、ロンドンにいた。そのバンドは3人組。デビューから前作『ロボット』まで6枚のアルバムがすべてミリオンセラーを記録したものの、新作は評論家からもファンからも酷評されていた。それでもなお、家族と暮らしているバースから鉄道で約1間半、わざわざロンドンまでやってきたのである。地元にもレコード・ショップはあるだろうに…。いや、好きなバンドや歌手、もちろんアイドルでもかまわないが、10代の若者がそれらに情熱を傾けるのは特別ではない。むしろ健全だろう。だから、キャロルがロンドンまで好きなバンドのニューアルバムを買いに出かけても不思議ではない。
 クラブ活動でリーダーシップを発揮するわけでもなく、サッカーやテニスなど、特定のスポーツにたけているわけでもない彼女は、平均的な17歳の女の子であり、学生だった。ただ、ひとつだけ「天才的」と記されていたことがある。グラフィック・システム(音楽を視覚化する装置)を使う課目において、音楽に含まれているさまざまなメッセージを読み取る能力が非常に高かった。著名なチェロ奏者である父親も、彼女の才能に気づき、大きく育てようとしたのか、キャロルの部屋にはさまざまなハイテクのオーディオ機器が揃っていた。
 そんなキャロルの周辺で、ある頃から不思議な出来事が頻発する。
例えば父親が在宅している時、いつも聴こえていたチェロのしらべが聴こえない日が続く。しかも、父親は日に日に元気を失っているように見えた。
あるいはある日曜日の午前中のこと。テーブルの上の新聞を見ると、『消えたビッグ・ベンの鐘の音』という見出しが目に飛び込んだ。新聞が伝えるところでは、ロンドンはちょっとした騒ぎになっているとのこと。原因は不明。ビッグ・ベンのあるウエストミンスター宮殿は、国会議事堂として使用されているので、いわば政治の中心地だ。そこで不可解な出来事が発生したとなると、常識的に考えれば、交通規制や検問などが行われていると察しがつく。
 すべてはシンクロしていると、キャロルは直感する。ガボール・スクリーンがいきなり問題作を発表したことも、彼女にとっては「すべて」のひとつであった。そこで「すべて」をつなぐ謎を解明すべく、ガボール・スクリーンの新作をグラフィック・システムで再生してみたのである。すると…。
瀕死の光と色に覆われ、メロディが逆再生を始め、激しい振動に襲われた。気がつくと、彼女は異次元にいた。妖精や女神たちが住むラ・パス・ル・パスだ。しかし、彼の地もまた、実世界同様、危うい事態に陥っていたのである。音を盗む悪魔「ジャイガンティカ」により、風の音も、潮騒も、小鳥のさえずりも、音楽も、すべてが消え失せようとしていたからだ。
音を盗まれ、荒廃していく世界を目の当たりにしたキャロルは、ラ・パス・ル・パスで出会ったフラッシュ、マクスウェル、ティコたちと共に戦う。そして、いくつもの試練や窮地を乗り越え、勝利を掴む。音と平穏を奪還するのである。
 異次元から実世界に戻ったキャロルは、ガボール・スクリーンの新作の中に、ラ・パス・ル・パスからのSOSのメッセージが含まれていたことを知る…。

 といった物語は、木根尚登の手によりディテールが描かれ、登場人物たちに豊かな表情が与えられ、小説として上梓された。ただ、「音が消える」のは小室哲哉の構想によるところが大きい。ビッグ・ベンの鐘の音が消える場面を詳細に描いたり、膨らませたりしなかったのも、同じく小室の意向らしい。不穏が街に漂うものの、実世界での出来事(事件)はタブロイド紙(大衆紙)の記事程度に止めたいと、打ち合わせの席でリクエストしていたとの証言もある。
なぜ、小室がそこにこだわったのか。自ら詳細を語ったことは過去1度もない。もしかしたら彼が10代の頃に出会ったトミー・ウォーカーが意識下に横たわっていたのか。あるいは80年代にロンドンで遭遇したファントムの仕業か。「邯鄲の夢」を知っていたのか。真実は、小室哲哉の中にしかない。
 CAROL生誕25周年にあたる2013年、頭の中に仕舞い込んでいた真実を解禁しようと、小室は決めた。しかし、単なる解禁で終わらないところが小室哲哉たる由縁である。封印してきた真実を核にしながらも、さらに新たな要素を練り込み、さらに深いところまで到達しようと試みた。かのピンク・フロイドは壁を壊したが、小室哲哉は扉を開けた。開け放たれた扉から、今まさにCAROLが姿を現わそうとしている・・・。
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