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ANARCHY 「BLKFLG」本人による全曲解説を解禁!


先週発売されたANARCHY2年ぶりのニューアルバム「BLKFLG」を本人が全曲解説!

01. CRADLE TO THE GRAVE feat. MIGHTY CROWN
「MIGHTY CROWNは、日本の音楽家で最もリスペクトする先輩かもしれないです。現場でのプレイはいつ観てもカッコ良いし、彼らのことを知らない客層でも盛り上げるのがハンパないな、って。彼らとはライヴ会場などで会うことが多かったんですけど、一昨年の『横浜レゲエ祭』(MIGHTY CROWN主催フェス)に呼んでもらって、そのあたりから関係が深くなってきましたね。アルバムのド頭で、俺のことを紹介して呼び込んで欲しい人が、MIGHTY CROWNだったんです。曲自体も、“音楽愛”や『音楽を楽しむ』っていうテーマで書いてたんで、ヒップホップにこだわらないでジャンルを超えた人を呼ぶのがいいな、って。俺は父親もミュージシャンだったし、生まれたときから音楽が周りにある環境で育ったんです。で、今も自分で音楽をやってるし、死ぬまでやろうと思ってるから、『この音楽とどう付き合っているか/今後どう付き合っていくか』とか、色々考えながら作りましたね」


02. WHATEVER
「この曲のトラックは、普段の俺がパッと選ぶようなトラックではないんですよね。レーベルのスタッフがこのトラックを薦めてきたんですけど、そのときに書きたいこととトラックがフィットしないと歌詞が出て来ないから、最初は『無理です』って言ってたんです(笑)。で、しばらくしてこのトラックを聴き返したら、『何て言われてもいい』ってサビのフレーズが思い浮かんだ。『コレ、ハマったな!』と思ったから、サビではしつこくこのフレーズを繰り返して。ひとつのフレーズを芯として作り上げた曲って、今まであまりなかったんですよね。このフレーズは、今の俺が言いたいことでもあるな、と思いました。自分がやりたい音楽を自分がやりたいように作って、自分が選んだ道を歩いているワケやから、他人に何と言われても好きなことをやれてる自分を褒めたい、っていう気持ちになれた曲ですね」


03. HELLA RICH feat. CRAZYBOY
「ELLY(CRAZYBOY)と曲を作るなら、“爆発系”の曲を作りたいな、と思ったんです。あと、彼が普段活動しているフィールドでは出来ひんようなことをやらせたいな、って思いも俺の中であって。この曲の内容って、言ったら下品じゃないですか(笑)?彼をこっちの世界に引きずり込むような曲にしたいな、って。『俺はリッチだぜ』って歌ってるように聴こえるかもしれないですけど、それだけじゃない。ラップは言霊で、言ったことが実現していくっていう“夢”についての歌でもあるんですよ。実現したこともあれば、まだ夢のままなこともあるけど、そんな中でも『俺らのマインドが“リッチ”』という気持ちを込めて書きましたね。俺らが、いつも遊んでるときに夢を語り合っているような感じで、この曲を作りたかった。俺が思うに、ELLYって本当に“ラッパー”なんですよ。目立ちたがり屋だし、佇まいとか振る舞いがいつも“やりすぎ”な感じがあって、そんなところがヒップホップ。『ラッパーよりラッパーやん』って。そういうアティテュードって、日本のラッパーに少ない部分でもあるし、そういったところには俺も触発されてますね」


04. チェインギャング
「THE BLUE HEARTSは青春です。ヒップホップに出会う前はロックをやると思ってましたし。“チェインギャング”は、10代の頃からずっと好きな曲で、自分の曲やと思ってるぐらい思い入れのある曲なんです。15~6歳の頃、長野に行くことがあったんですけど、長野の駅前で雪の中、ひとりギター弾いてるお兄ちゃんがいたんですよ。で、そのとき弾いていたのが“チェインギャング”だった。当時はこの曲のことは知らなかったから、そのお兄ちゃんに『誰の曲ですか?』って聴いたら教えてくれて。で、『もう一回聴かせて下さい!』ってお願いして、体育座りしながら聴かせてもらって、そこから大好きな曲になったから、家に帰って速攻で曲名のタトゥーを入れましたね。そのエピソードをレーベルのスタッフも知っていたから、カヴァーの許諾を取ってきてくれて。大好きな曲やし、コレをどうアレンジして作ればいいんだろう?って最初は悩みましたね。悪い曲にするのもイヤやし、そのまま歌ってもオリジナル曲より良い曲にはならないけど、現行のカッコ良いヒップホップにあの曲を載せるのは結構難しいな、って思ったから、試行錯誤しながら作りました。でも、やっぱり敢えて原曲のイメージをぶっ壊して、ただのカヴァーとして歌うんじゃなくて自分のモノにしたいな、と思いましたね」


05. SO WHAT?
「昔より、世の中からいろんな意見が聞こえるようになってきて。良い意味でも、悪い意味でも。そういったことを逆手に取って、『俺はこういう思いでこれまでやってきて、だからこそ今がある』ということをラップしてます。今作で俺の作品を初めて聴く人もいるやろうし、『NEW YANKEE』の頃からファンになった人もいますよね。そういう人たちに、『俺はこういうところから来た』っていうことを伝えるのもヒップホップやと思うんです。そういうことについて表現している曲って、最近作ってなかったな、と思ったんですよね。今やから歌えることも出て来てるから、このタイミングで『ここまで来た自分』を表現できたらな、って思って作りました」


06. MATADOR
「簡単に言ったら、『ランボルギーニに乗りたい』って歌なんですよね。ランボルギーニの車種名って、闘牛の名前から来てるものが多いんですよ。ディアブロとかアヴェンタドールとか。で、その闘牛を一番上手く操った一番の闘牛士を“マタドール”と呼ぶんです。だから、『俺は日本で一番のラッパー=マタドールになってランボルギーニ乗り回したる』っていう歌なんです。『ラップで稼いでランボルギーニに乗るのって面白くね?』ってことはずっと言ってきたことやし、ひとつの夢でもありますね。童心のまま書いたという意味では、もしかしたらアルバムで一番素直な曲かもしれないです。そういう曲だから、難しい言葉は使いたくなかったし、出来るだけシンプルな曲にしたかった。『マタドールになりたい/Vaca(牛)乗りこなしたい』っていうサビのフレーズもシンプルやけど、そこだけでも考えさせるような歌詞にしたかった」


07. HAMIDASHIMONO
「アルバム制作の初めの方に書いた曲です。自分のことを“ハミ出し者”だとは前から思ってはいたけど、最近つくづくそう思うな、って。なんか……世の中に馴染んでない(笑)。俺のことを知ってる/知らないに関わらず、俺とすれ違うとみんな振り返ってくるし(笑)。自分の見た目からそういう風になるんだろうし、自分でも敢えてそう見えるようにしてる部分もあるんでしょうけど。実は、この曲は“母親”が裏テーマなんですよ。この曲で歌ってる“神様”はお母さんのことで、そのお母さんに捨てられたときから俺は“ハミ出し者”やし、はぐれてしまった、っていう曲なんです。“ハミ出し者”って、自分で道を選んで好きに生きていくような人間やけど、それにはリスクも伴うし、何でも自分で決めていかないといけない部分もある。『ハミ出せて羨ましい』って思う人もいるかもしれないけど、“ハミ出し者”には“ハミ出し者”の責任があると思うんです」


08. NO FEAR feat. JONNY & YDIZZY
「JOHNNYとYDIZZYは、自分の近くにいる人の中でも、ラップ以前に人間として面白いと思ってて、影響を受けている人たちなんです。YDIZZYはまだ20歳ぐらいなんですけど、感覚が『古新しい』というか。尾崎豊の映像を観てて『あのパンツ、新しい!』とか言い出すようなヤツなんです。俺らが古いと思ってるモノも、彼にとっては新しく見えたりしてて、そういう感覚から得るモノがたくさんある。JOHNNYも、見てくれからキャラまで、全てが面白い。彼はあまり作品を出してきてはいないけど、10年以上ラップをやって来てたヤツだし、彼のラップを聴いて『あ、ちゃんとやってきてるな』っていうのも感じましたね。この曲に関しては、JOHNNYにもYDIZZYにも、『こういう曲にしてくれ』とか、オーダーは何もしてないんですよね。まず俺のパートを書いて、雰囲気を伝えた上で彼らに書いてもらったら、こういう感じに仕上がった。だから、何を言ってるか分からないような部分もいっぱいあるんですけど、そういうのも逆に新鮮だな、って。俺は、子供の頃聴いてたラップって、ほとんど意味が分かってなかったんですよ。オトナになってやっと理解できた部分がいっぱいある。『何て言ってるんだろコレ?歌詞カード見たい』って勘ぐらせるようなラップっていいな、って思ったんですよね」


09. BLACK MARIA
「いつも、トラックを聴いてから何について書くか決めるんです。で、まず単純にカッコ良いと思ったからこのトラックを選んだんですけど、イントロを聴いた瞬間、何故か自分が護送車にいる気分になったんですよね。だけど、ただ捕まって刑務所に放り込まれる、みたいな曲は別に書きたいことじゃなかったから、『護送車の中にいるときにどんなことを考えるんだろう?』ということをイメージしてみたんです。そうしたら、『あの娘に会いたいなー』っていう、人のことが恋しくなるというイメージが浮かんだ。曲でも歌ってるけど、通りすがりの高校生の男女が手を繋いで歩いてる光景を眺めて羨んでる、みたいな。そういった感情を込めたラヴ・ソングを作ってみようと思ったんです。想像も入ってるけど、昔に自分が感じたことも踏まえて書きましたね」


10. TOMODACHI
「ひとりぼっちになってしまった友達とか、自分が孤独だと思ってしまっている友達だったり、俺の友達じゃなくてもイジメられたりして自殺してしまうような子供もいる。でも、実際は“ひとり”の子なんていないんですよ。だから、自分が“ひとり”だと思ってる子たちにそういうことを伝えたいと思ったんです。友達って別に、同級生とかだけじゃないじゃないですか。親でも友達になれる可能性があるし、近所のお兄ちゃん/お姉ちゃんでも、その子のことを想ってる人はたくさんいると思うんです。俺自身にも当てはまる話だし、実際世の中に孤独を感じて生きてる人も多いと思ったし、そういう人たちにエールを贈るためにちゃんと伝えた方がいいと思ったんです。孤独を感じることって、誰でもあるじゃないですか?時には孤独を感じることも大事かもしれないけど、それ以上に『自分はひとりじゃない』と思うことの方が大事かな、って思うし、この曲を聴いてそういう想いにリスナーの人たちがなってくれたらいいな、って」


11. TRUE ROMANCE
「アルバムでは毎回、ラヴ・ソングは入れてるんですよ。恋はみんなするモノやし、世の中には恋愛ソングが溢れてるけど、俺にも歌えることがある筈やと思ってるんです。だけど、いつも捻った内容だったり斜めから見たようなラヴ・ソングが多かったと思うんですよね。付き合ってる過程とか別れについての曲じゃなくて、『その人を見た瞬間から恋するやん?』みたいな、出会った瞬間の一番ピュアな気持ちを歌えたらな、って。出会ってから、その娘に彼氏がいるのか?とか、どんな環境で育ってきたのか?とか、そういう話をしているような、恋愛の初期段階のピュアな感情について歌ってる曲って、今まであまり作ってこなかったな、って。みんな、そういう段階って好きでしょ?」


12. ヒトヒトリフタリ
「高橋ツトムさんっていうマンガ家の方がいるんですけど、その人のマンガのファンで、縁あって先生とも仲良くさせてもらってるんです。これまでのアルバムでも、先生から『こういう曲書いてみたら?』ってアドヴァイスをもらって書いた曲ってたくさんあるんですよ。この曲に関しては、先生からアドヴァイスされたわけではなく、先生の作品(『ヒトヒトリフタリ』)を読んでたら、『俺が書きたいメッセージと似てる』と思ったんです。今回のアルバムに足りない要素はコレかな、と思って最後の方に書いた曲です。ラッパーって、人々のためのリーダーであり代弁者であるべきだと思ってて、俺もそうありたいと常に思ってるんです。マンガの世界のヒーローは、正義の存在として最後まで通すキャラクターが多い一方、現実世界のヒーローは、人の屍の上を歩いてでも成り上がってスターになっていくような存在だと思ってたんですけど、それだけじゃないな、と最近は思ってて。逆に、人が自分の上を歩いていったり、人のためになったりするような人こそが、本物のヒーローだと今は思ってるんです。以前は、『みんなを踏み潰してでも俺が上がっていく』と思ってたけど、それだけがヒーローじゃないし、みんなの気持ちをちゃんと歌えるラッパーになりたい、という感情が生まれてきて、この曲を書いたんです」